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「湊が庇ってくれたから、私は軽傷で済んだけど、湊は一時期危なかったんだよ……?
先生が言うには、頭を守ってなかったら死んでたって……」


ある程度の体力が回復し、後日、Aと病室で話していると、当時の俺のことを聞いた。


「まあ、生きるにはアレしか無かったから……」


昔、Aに貰ったメモ帳。
内ポケットに入れていたからそれを取り出し、頭に当てた。

まさか、あんなものが俺を守ってくれるとは自分でも思わなかった。


「……ねえ、湊」


Aは少し顔を伏せて、口を開いた。


「パラレルワールドって知ってる?」


「パラレルワールド……四次元の中にある、俺たちと同じようなもう一つの世界、だよな」


パラレルワールドは並行世界だ。


「うん……。あのね、私、
……夢の中で自分が死ぬ夢を見たの」


それを聞いて俺は目を見開いた。
Aが死ぬ、というのは、本当はこの世界にあり得ることだった。


「……思ったんだよね。
本当は、私はこの世界には生きてない人間なんじゃないかって。
バカみたいだけど……。
でも、他の世界だと私は今、死んでる未来もあるんでしょ?」


確かに、本来ならAは死んでいた人間だ。
この世界は現実だったものと矛盾が生じる。


「それに夢の中に湊に似た男の人が出てきて、すごく寂しそうな笑顔をしてたの……。
もしかして、私や湊を助ける手助けをしてくれたのかな?」


暗闇の中にいた、もう一人の俺を思い出す。
確かに、俺に時間を巻き戻す手助けをしてくれ、アイツはAが死ぬ未来を知っていた。


「そう、なのかもな……」


アイツは自分の世界でAを失っていたんだ。
だから他の世界のAを生かした……ということか?


「……人はいつ死ぬかなんてわからない。だから、」


Aは俺の手に自分の手を添えた。


「他の世界にいる私たちの分まで、幸せになろう……?」


「なんで疑問形?」


「え、それは……」とAが焦る素振りを見せ、口籠る。


「し、『幸せになろう』なのか、それとも、『幸せになってください』なのかわかんなくて……」


Aがカァーと頬をどんどん赤く染めていく。
それは……


「……そういうのは、俺から言いたかったよA」


「あ、ごめん……」


「だけど」と言ってAの赤く染まった頬に手を添える。


「俺もAと幸せになりたいよ」


涙を零して笑顔を綻ばせるAと口づけを交わす。他の俺たちの分まで、幸せになろう。

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設定タグ:オリジナル , パラレルワールド , 事故   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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昆布の神(プロフ) - 日向鬼@青いブレスレット運動参加さん» 一コメありがとうございます!パラレルワールドとかの都市伝説的なやつが私大好きなんですww ファンなんて本当に嬉しいです!! (2020年5月24日 21時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
日向鬼@青いブレスレット運動参加(プロフ) - え!?やった!僕コメ一番! (2020年5月24日 21時) (レス) id: 01514d0bec (このIDを非表示/違反報告)
日向鬼@青いブレスレット運動参加(プロフ) - パラレルワールドの世界線もいいですねえ…ほんと好きだわ。昆布さんの作品。なんか最後には全部繋がるし、その場の空気も伝わって切るし、神作者さんだよ!僕はもう昆布さんファンになった! (2020年5月24日 21時) (レス) id: 01514d0bec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2020年5月24日 8時

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