音柱の継子さんどうやら地味に過ごしたいようです

地味でいさせて　２１ ページ24

時透Side



強く降りしきる雨を見てAは「雨、止まない感じですかね？」と聞いてきた。


時透「そうだね」


そう答えるとAはいつものように溜め息をついて濡れてしまった髪の毛を解いた。

雨に濡れて少し色気というか、そういうものが増していて、更に髪の毛を解くとより一層Aが大人っぽく、綺麗に見えた。

綺麗な髪を持っているんだから、甘露寺さんのようにもっと凝った髪型をすれば良いのに……と思うが、面倒くさがり屋且つ、地味でいたがる彼女にとっては拒否しかしないだろう。


しかし、彼女が人より綺麗な……所謂(いわゆる)美人である事は明白だ。

それなのにAは甘露寺さんや胡蝶さんと違って全く笑わない。

胡蝶さんも笑っているのかといえば、微妙な方だが……。



そんなことを考えている間に僕はAを目に穴が開くほど見つめていたのに気づき、Aに気づかれる前に顔を逸らした。


思ってもいないことでAを揶揄うのは簡単だ。

だけど、実際に思っていることをAに伝える事は何故かできなかった。



A「……あの」



くい、と隊服の袖を軽く引っ張られた。



A「寒いので……もうちょっと奥の方に行きませんか……」



Aは少し控えめにそう言ってくる。

ああ、前の柱での飲み会のことだろうか。

自分が中に入らないかと問うた時に断ったことを気にしているのだろう。

Aは上官に対してだけは、真面目すぎる。



だけど、



時透「いいよ」



普段、上官に何か頼み事をしたりしないAが、そう言ってくれたのが妙に嬉しく感じた。

何でだろう。

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