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「まーたお前はそういうこと言う」
「ゔっ」
瀬見さんが帽子の上から思いっきり手を乗せてきた。
黒いキャップのつばのせいで前がよく見えない。
「頑張ったじゃん。十分だろ」
「……」
ちょっとだけ口元が緩んだので、キャップをかぶってきて良かったと思った。こんな顔は、頻繁に人に見せるモンじゃない。
「そうだねー。英太くんはそれでもーちょっとだけ服がカッコよければ、ね……。……………うん」
「もういっそハッキリ言ってくれよ！？」
「ダサ」
「……」
天童さんに哀れみを含んだ目を向けられてしまった瀬見さん。彼の今日の服装は……彼の名誉のために言語化しないでおこう。
「にしても、葉山はいろんなことに巻き込まれがちだなあ」
「そうですか？」
大平さんがにこやかに言った。
すると、天童さんが瀬見さんの相手をしながら、思いついたように人差し指をあげた。
「銀髪だから
「こんなに東洋の顔してるのにですか！？」
※ちなみに天然の銀髪は存在しない。
＊
国見 side
「あつ……。帰りたい……」
そんな俺の独り言はさざ波にかき消された。
勝手に帰ってもいいが、こんなに暑いと逆にそんな気も起きない。
みんなが海に入ったりビーチバレーしているのを遠目に、俺はひとりテントの下で涼んでいた。
さっき金田一に「お前は海入んねーの？」と言われたけど、そもそも入りたくないから水着を持ってきていない。
「もー。国見ちゃんってば、こんな序盤からグダらないでよ」
「……試合の時は許してくれるじゃないですか。及川さん」
海パンに前が開いている半袖の上着、そして目ではなく頭につけているグラサン。自称海男、及川さんが茶々を入れに来た。
「せっかくの海だよ？ 仲間と青春を勤しんだり、女のコとの出会いを求めたりしないの？」
「そんな願望ないっス」
「つれないこと言わないでよー。じゃあ及川さんのこれから起きる色恋沙汰に付き合ってもらおっ」
及川さんがクイッと親指で反対方向をさして、俺を促すように後ろを向いた。
「かな……」
トーンが落ちた声に違和感を覚え、顔を上げるとそこには予想もしていなかった集団がいた。
「……！？ Aちゃん！！ ……と、
「おいコラてめぇ」
呆然としていると、白鳥沢の面々に囲まれている葉山も同じように目を丸く開いて立ち尽くしていた。
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2024年1月12日 2時
