検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:3,615 hit

ページ43

*



「メタルクロー」



(あるじ)に言われるがまま、目の前のケムッソを鋭い爪で切り裂く。
そして、主が投げた空のモンスターボールにケムッソは呆気なく捕獲された。

主である少女がモンスターボールを拾うのを、俺は遠目に眺めていた。

少女は下っ端の頃、単独ではこういう仕事をやらされることが多かった。こういう仕事。……まあ、簡単に言うと、下っ端に供給するための野良ポケモンを捕獲していたのだ。


ただ、たまに人間か盗む仕事もあった。もちろん、“上”に命じられて。


俺をこの少女にやったあの幹部のそばにいることの方が多かったが、幹部との行動では、少女はだいたい本部で生体実験の手伝いをやっていた。




「ニューラ、おいで」



ちょいちょいと少女が手招きをしたので、俺はそれにしたがって少女のそばにいく。
すると少女は、おれの頭に手をおいて軽く撫でて、こう言うのだ。



「ありがとう。がんばったね」




ずっと独りで生きてきた。

こういうことは、できていないといけなかった。当たり前のことだった。

それなのにこの少女は、俺に(ねぎら)いの言葉を投げかける。


悪い気はしなかった。
褒められるのは嬉しかった。

この少女は、俺を必要としてくれているとわかるから。







「あのね、みんなは私のことウラヌスって呼ぶけど……。
本当の名前は、違うの」



仕事の小休憩をしていると、草っぱにすわりながら少女が言った。



「本当の名前は、A」



A。

綺麗な名前だ。


Aは、隣にすわる俺を見下ろすと、普段は全く見せない笑顔……笑顔というか、若干口角が上がっただけだったけど、そんな表情で言った。



「……ニューラだけは、本当の私を知っててね」



世界のどこにも少女の居場所がないのなら、俺が少女にとっての居場所になりたい。心の拠り所でありたい。

だって少女は、俺と同じだから。








クロガネ炭鉱での仕事のとき、Aは上の幹部と一悶着あった。

というのも、クロガネ炭鉱でたまたまみつけたズガイのカセキを、Aは組織に無断で復元して自分のポケモンにしてしまったのだ。


下っ端はみんな、上から支給されるポケモンを使う。そういう規則(きまり)だから。

そのため、Aは生まれたばかりのズガイドスそっちのけで、上の幹部からこっぴどくお叱りを受けた。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
7人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2023年1月26日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。