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「メタルクロー」
そして、主が投げた空のモンスターボールにケムッソは呆気なく捕獲された。
主である少女がモンスターボールを拾うのを、俺は遠目に眺めていた。
少女は下っ端の頃、単独ではこういう仕事をやらされることが多かった。こういう仕事。……まあ、簡単に言うと、下っ端に供給するための野良ポケモンを捕獲していたのだ。
ただ、たまに人間か盗む仕事もあった。もちろん、“上”に命じられて。
俺をこの少女にやったあの幹部のそばにいることの方が多かったが、幹部との行動では、少女はだいたい本部で生体実験の手伝いをやっていた。
「ニューラ、おいで」
ちょいちょいと少女が手招きをしたので、俺はそれにしたがって少女のそばにいく。
すると少女は、おれの頭に手をおいて軽く撫でて、こう言うのだ。
「ありがとう。がんばったね」
ずっと独りで生きてきた。
こういうことは、できていないといけなかった。当たり前のことだった。
それなのにこの少女は、俺に
悪い気はしなかった。
褒められるのは嬉しかった。
この少女は、俺を必要としてくれているとわかるから。
*
「あのね、みんなは私のことウラヌスって呼ぶけど……。
本当の名前は、違うの」
仕事の小休憩をしていると、草っぱにすわりながら少女が言った。
「本当の名前は、A」
A。
綺麗な名前だ。
Aは、隣にすわる俺を見下ろすと、普段は全く見せない笑顔……笑顔というか、若干口角が上がっただけだったけど、そんな表情で言った。
「……ニューラだけは、本当の私を知っててね」
世界のどこにも少女の居場所がないのなら、俺が少女にとっての居場所になりたい。心の拠り所でありたい。
だって少女は、俺と同じだから。
*
クロガネ炭鉱での仕事のとき、Aは上の幹部と一悶着あった。
というのも、クロガネ炭鉱でたまたまみつけたズガイのカセキを、Aは組織に無断で復元して自分のポケモンにしてしまったのだ。
下っ端はみんな、上から支給されるポケモンを使う。そういう
そのため、Aは生まれたばかりのズガイドスそっちのけで、上の幹部からこっぴどくお叱りを受けた。
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2023年1月26日 20時