氷の火山【サターン】【プラチナ】 (ページ25)

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国際警察では、『ウラヌス』という偽の名前で入団しろと言われたが、当時反抗的だったAは、ウラヌスが偽名であることを見せつけるかのように、

『ウラヌスって呼んで欲しい』とサターンに告げた。

無論、頭のいいサターンには偽名であることが速攻でばれ、それが、組織内でサターンのみがAの本名を知るきっかけになった。

Aの面倒をよく見ていたサターンから初めてもらったポケモンはニューラだった。

ウラヌスというのは“天王星”を意味しているのだとサターンから聞き、天王星を調べてみると、天王星は岩石の核と氷のマントルのまわりにガスの層をもつ巨大氷惑星であることを知った。

だからこおりタイプのポケモンをくれたのかなーってニューラに話しかけたら、ニューラはよくわからないみたいな顔で首を傾げた。

だからAは、自分のコードネームにちなんでこおりタイプといわタイプのポケモンしか使わなかった。

ギンガ団は、ときにポケモンを殺すこともある。
入ったばかりの頃は、血の生臭さに吐き気を催すこともあった。

しかし、慣れというものはおそろしく、いつの間にか生き物の死には何も感じず、ポケモンを自ら手にかけることすら罪悪感のひとつ覚えなくなった。
国際警察と繋がっている者とは思えないような人間になってしまったのだ。

＿＿＿＿ああ、そうか。

Aとコウキには、確かに決定的な違いがあった。

正しい人間か、正しくない人間か、だ。

コウキは正しい。正しい正義感を持っている。
コウキは絶対に、いかなる理由があろうともポケモンを殺したりなどしない。

Aは今まで何体ものポケモンを手にかけてきた。

それが、違いだ。

きっとこれは今まで犯した罪の罰なのだ。

そもそも、こんな自分がコウキと同じになど、なれるはずがなかったのだ。

分不相応(ぶんふそうおう)な夢など見ず、適当に国際警察の犬として生きていれば、今こんな状況になったところで、死ぬのは怖くなかったし、こんな惨めな思いをすることだってなかったのに＿＿＿＿。

頬に生温い何かが流れた。

まさか雨漏りでもしたのかと思ったが、Aは自分の目に違和感を感じた。ひとつ瞬きをすると、また頬に生温い水が流れる。

そのとき初めて、自分が泣いていることに気がついた。

Aが泣いているのを見た瞬間、反射的という表現が正しいほどに速く、サターンの手がAの頬に触れた。