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「……誰のせいよ」

「生意気を叩ける元気があるなら何より」



サターンが後ろ手に扉を閉めると、また部屋が薄暗くなった。



「感情の神エムリット、知識の神ユクシー、意思の神アグノム……三体とも捕獲に成功した」

「あっそ。……わざわざ報告なんかしなくていい」



遠回しにAは『早く帰れ』と言っているのだが、それにおそらくサターンは気づいているはずなのに、嫌がらせのつもりなのか、帰るどころかAの前にしゃがみこんでさらに距離を縮めてくる。



「でもお前、退屈は嫌いだろう」

「うるさい」



何を知ったような口を、とAは思う。

Aは内心サターンに裏切られたような気持ちだった。
元々騙していたのは自分だ。
しかし、心の奥底ではサターンを慕っていた。
けれどサターンは、簡単にAの死を受け入れてしまうのだ。







Aの両親は国際警察の諜報員だった。
しかし、その両親がとある組織への潜入調査によって亡くなると、大人達はこれみよがしにAに目を向け、たった十一歳にしてギンガ団に送り込ませようとした。

大人よりも子供の方が警戒されにくい___そう思ったようだ。実際にはこのザマだが。


両親を亡くし、吹雪の中にひとり置いていかれ、Aの生きる道は、もはやひとつしか残されていなかった。

でも、大人の言いなりになることが悔しかったし、何よりも、こんな子供が受け入れてもらえるはずがないとA自身 思っていた。


吹雪の中、任務に訪れたギンガ団___それがサターンだった。


Aは、何も言わずにサターンを見つめていた。

何も言わなかったのは、世界への抵抗だった。
大人達の言いなりになってたまるか。
世界の不条理に従ってたまるか。

いっそ、ここで殺された方がマシだとすら思っていた。




『……ひとりか?』



そのとき、サターンは幹部になったばかりだったらしい。
冷たい目だったが、Aの目線に合わせて話すその姿に、少なくとも殺意は感じなかった。



『…………ギンガ団に入りたくて、来た』



そのとき、サターンが少し驚いたように目を開いたのを、Aは今でも覚えている。

しばらく無言の時間が流れて、Aは何も言わずにサターンをじっと見つめるばかり。


すると、不意にサターンがAに手を伸ばして、言ったのだ。



『この手を取れ。……生き物の死を見る覚悟があるなら』

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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2023年1月26日 20時

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