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「明日、湖の伝説ポケモンを捕らえに行く」

「…………あ……」



いつもなら、いつもならば__。

Aは、あっそ、とか、わかった、とかで済ませてしまう。なのに、たった一秒で終わるその一言が出なかった。



「嫌か?」



すると、突然サターンがAの肩を掴み、そのまま押した。


Aは、耳に冷たさを感じた。
こめかみから流れた冷や汗が耳に落ちたのだと気づくのには、それなりの時間がかかった。

流れた汗が、なぜ顎ではなく耳に落ちたのか?


それは、Aの顔の横に置かれた手と、視線の先にある天井とサターンの顔がすべてを物語っていた。



「可愛げのない態度ばかり目立っていたがな、所詮たった十六の小娘。本性は土壇場で出る」



サターンの言うAの本性とは、思春期特有の大人の支配から逃れたがる子供の自立心だ。
今、Aはギンガ団の支配から逃れたがっている。
そのことを、サターンは既にわかっている。



「だが、哀れなものだな。数年前、お前がギンガ団に入ってきた時からずっと、お前の体には発信機が埋め込まれてある。何をしていたかは知らないが、その時どこにいたかは常に把握済みだった」



Aの顔がサッと青ざめた。

組織内の立場は同じでも、十六歳と二十二歳。
人間としての能力はサターンのほうがAより一枚も二枚も上手(うわて)だったわけだ。



「お前が求めているのは、“自由”だろう」



Aは、常に居場所が把握されていたことに恐怖を覚えて顔を青くしたのではない。

もしギンガ団を抜けることができても、発信機の存在によって自分の自由を制限されることに恐怖を覚えたのだ。



「だが安心しろ。計画はすべてお前なしでも遂行できるように組み立ててある」

「……なんで」



かろうじて出てきた言葉は、酷くかすれた声になった。

サターンの手が、逃がさないと言わんばかりにAの顔を掴み、そして顔を近づけた。



「お前が___国際警察から派遣された犬だからだ」



Aは、小さい声で「違う」と言った。

スパイであることがバレているかもしれないことは、A自身もわかっていた。バレている前提で常に動いていたし、死ぬのが怖くなかった頃は、怪しい動きでさえ、もはや堂々行っていた。



「じゃあ、どうして、サターンは私をギンガ団に入れたの。……どうして……アカギがそれを許したの……」

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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2023年1月26日 20時

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