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「アオイ、いつまで寝てんの。遅刻するよ」
「……あと五分……。…………すやぁ」
懲りずにアオイが二度寝をしようとしたので、最終手段に出て、かけ布団をぺっと剥がした。
「えっ、ちょ、寒ッ! ……くない……!?」
「そりゃガラルより温暖なのは当たり前だろ。パルデアなんだからさ。ていうか、このやりとり何回目?」
「そっか。寒くないか。じゃあおやすみ」
「おやすみ、じゃないっての。あと三十分で家出るんだけど」
「え!? 早く言ってよ!」
「お前が起きないからじゃん」
「ひゃー」と焦っているのか呑気なのか、よくわからない声を上げながら、アオイがベッドを飛び出して顔を洗いに行ったので、その姿を見て自分もまた1階のリビングに降りた。
「アオイ起きたみたい。ありがとうね」
「べつに」
ぶっきらぼうに答えて、再びソファにすわると、ホシガリスが今度は足元ではなく足を使ってよじ登ろうとしてきた。しかし、登るのに悪戦苦闘していたので、抱きあげて腿の上に乗せる。
「ママー! 私のシャツどこー!?」
いつの間にか洗面所から自室に戻っていたらしいアオイの声が聞こえる。
母さんは、「あ、干したままにしちゃってた」と独りごちながら一度ベランダに出て、シャツをとるとアオイに渡しに行った。
しばらくしてから、制服に着替え終わったアオイがようやくリビングに降りてくる。
「あ、そうそう。さっき校長先生から連絡があってね。大事な資料を渡し忘れたんですって。だから家で待機しててくださいって」
「……へえ」
相槌を打ちつつ、内心、さっきアオイを起こした自分の苦労はなんだったのかと疑問になる。昔、よく同級生から苦労人と言われていた理由が、最近になってわかるようになってきた。
すると、不意に家のインターホンが鳴った。
「アカデミーの先生かも。出てきてくれる?」
「はーいはい」
「“はい”は一回」
「はーい」
起きてるときに限っては、積極的に動いてくれるのはアオイだ。ステップを踏むような足取りで玄関に向かい、ドアを開けた。
「あー! こんにちは!」
僕よりも人懐っこい性格のアオイは、初対面の人ともすぐに仲良くなれる。
玄関を見ると、紳士的な雰囲気の漂う男性がいた。たぶん、あの人が校長先生だ。
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2023年2月25日 23時