第四百四十二話 ページ32
「僕、祐介君を描けてよかった。」
思ったままのことを伝えれば、溢れ出す気持ちは収まらない。
「最後に、自分が心の底から描きたいって思えたのが、祐介君でよかったと思う。」
「俺で？」
「うん。」
彼が指で僕の頬に触れ、涙を拭う。それが妙に気恥ずかしくもあり、お礼を言いつつもハンカチを取り出した。
「僕、祐介君に憧れてた。ブレずに自分の道を進んで、まっすぐなところ。
そりゃ、そのおかげでいっぱい驚かされることもあるけど、
周りに流されず、自分の足で立てていることが羨ましい。
今わかっちゃった。そんな祐介君が僕にしてくれたことを、僕もやってみたかったんだ、ずっと。
それが僕の未練。」
溢れ出そうな涙をハンカチで抑えながら、溢れ出てくる言葉をつらつらと口に出してしまう。
しかし、祐介君からは何も返ってこない。まさか困惑させてしまったかと思いハンカチから目を離すと、そこには顔を赤くして口元を片手で覆った姿があった。
「…すまない、好きな人にここまで褒めてもらうと言うのは、なかなかに照れるな…」
彼が照れているなど珍しく、思わず笑いが込み上げてきてしまった。
「何か笑わせるような発言だったか…？」
「ごめん、なんか、真面目なこと言った気になってたの、自分だけだったんだなあって！」
祐介君に憧れてた、うん。きっとそうだった。
僕も、祐介君みたいにまっすぐ進みたい。」
「…ああ。そうだな。
そのためにも、この現実をどうにかしなければな。」
「うん、…絶対に、改心させようね」
学校のチャイムが鳴り、かなりの時間空き教室にいたことに気がつく。外はすっかり夕焼け空だ。
僕らは荷物をまとめ、空き教室を出た。
「いつもありがとう」
「いや、少しでも共にいたいからな。」
いつものように、駅前で別れの挨拶を交わす。そのまま駅に入ろうとしようとしたその時、
突然、唇に温かい感触があった。
それは一瞬で、固まったままの僕を祐介君は見下ろしながらこう言った。
「空き教室で、ずっと見ていたら口付けをしたくなってな。」
その顔は少し微笑んでいたし、僕が顔を真っ赤にして動けないのを見届けた彼は帰ってしまった。
人目を気にする余裕もなく、その場にへたりと座り込んでしまう。
「ほんっと、勝たせてくれない…」
僕が愛を伝えれば、その倍以上の愛情表現で返してくる男だ。
喜多川祐介というのは。
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ほだん(プロフ) - ことりとりさん» コメントありがとうございます。私も最近再燃したばかりでして、更新を再開したとともに、こうして読んで感想を送ってくださる方がいらっしゃってとても嬉しく思います。今度とも、どうかよろしくお願いいたします…！ (7月15日 23時) (
レス) id: 4df65f2172 (このIDを非表示/違反報告)
ことりとり(プロフ) - 最近ペルソナ5にハマり出して更には喜多川祐介推しになったので読めるのがらとても嬉しいです！予想外な所で攻めてくる喜多川君にキュンとしてます。更新楽しみに待ってます！ (7月15日 22時) (レス) id: ff4d88310e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほだん | 作成日時：2023年6月30日 23時
