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第百四十八話 ページ7

ひとつの家に辿り着き、中へと入るとアシリパさんと眼鏡をかけた初老の男の姿が見える。

 「アシリパさんを解放しろッ」

 彼の首元に刃を向けると、「やめろナマエッ」とアシリパさんの声がかかる。体を止めると、青い顔をした男の目が私の刃に向けられた。

 「君…その刀は虎徹か?いや、しかし…」

 「どうした、何が言いたい…」

 「これは…本物ではない。贋作だ…!」




 『お前に預けるよ、これは軍に持っていけないから。祖父もこの刀があったから池田屋で無傷だったんだから、お前のことも守ってくれるよ』



 突然、頭を殴られたような感覚に陥る。ショックのあまり止まっていた体が再び動いたときは、自分でも考えられないほどの悲痛な声を出していた。

 「噓だ…!これがあったから祖父は…私は…!」

 「お前が贋作師の熊岸長庵だな?」

 アシリパさんのその一言が、彼の言葉を正しいと証明する。贋作を作れる人物であれば、目利きの腕は確かなのだろう。腕の力が抜け、刀は降ろされる。

 「今は手元にないがお前に判別してほしい物がある。ある剥製屋が作った贋物と思われる刺青人皮だ。私たちはお前に会いに樺戸へ向かっていた」

 そう言われた熊岸は、少しだけ悲しそうにする。そんな彼の横で、私はまるで抜け殻のようになっていた。

 「贋作師か…贋作など好きで作ったわけじゃない。頼まれたからだ。贋札だってそうだ。絵だけでは食えなかった」

 彼は印刷機を見ながらぽつりぽつりと呟く。自分のやりたいことが上手くいかず、そうして人を傷つける道へと誘われる。その境遇に、私は家を飛び出すきっかけになったことを思い出す。知りたくなかったことや思い出したくなかったことが次々と頭の中に流れ、その場で膝をつく。アシリパさんはそんな私の手を握った。血まみれの、あたしのてを。

 あたたかい。

 「でもね…これはさっきキミが知りたがっていたことの糸口になるかも知れないんだが……」

 彼女は顔を上げ、熊岸の顔を見る。すると外から杉元さんの声が聞こえた。

 「アシリパさん!!良かった無事だったか!!」

 熊岸は驚いて顔を出す。しかし血まみれの私とその手を握る彼女の姿を見ると、杉元さんは彼に銃を向ける。

 「駄目だ杉元ッこの男が熊岸長庵だ!!」

 アシリパさんがそう叫ぶと彼は銃を下す。

 「え?熊岸がなんでこんな所に?」

 その瞬間、矢が杉元さんの脇を矢が通って行き、それが熊岸の腹に刺さった。

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ほほいほい(プロフ) - 烏羽さん» ありがとうございます。コメントを頂いたのが初めてなので嬉しい限りです。これからも応援していただけますよう精進いたしますので、どうかよろしくお願いいたします…! (2021年9月26日 21時) (レス) id: a999479a6f (このIDを非表示/違反報告)
烏羽(プロフ) - 思わず一気読みしてしまうぐらい最高でした!応援してます! (2021年9月26日 19時) (レス) id: 9dd84298a0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ほほいほい | 作成日時:2021年9月22日 23時

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