第百四十七話 ページ6
「…なあ、あんたアシリパさんはどうした?」
ああ、とエクロクは青年の側によると、彼の言葉を通訳する。
「弟が言うにはあの娘は近所の女性に刺繡を教わって夢中になってるそうだ。まあこんなところ子供に見せない方がいいだろう」
瞬間、杉元さんが飛び出し青年をキサラリで殴りつけた。そして地を這うような声を、鬼のような顔から発したのだ。
「アシリパさんが『刺繍に夢中』だぁ?てめえ……あの子をどこへやった?」
「あ?なんだその足」
牛山が指さしたのはたった今殴られた青年の足首…着物の裾から入れ墨が覗いていたのだ。
「そうそう、さっきも出ていく時にちらっと足首に見えた気がしたんだよな」
「尾形、だからあんなにずっと警戒していたのか…俱利伽羅紋…あんたたちヤクザか?どうしてこんなことをしている!?」
杉元さんは折れたキサラリを掲げ、この世のもとは思えないほどの恐ろしい声を出した。
「ゔぇろろろろごうろろろあ゛あ゛ッッ!!」
「すごい!耳長おばけがやってきた!」
「アシリパさんをどこへやった!!」
まるで轟音だ。稽古でも聞いたことのないくらいの大声を杉元さんは発する。思わず置いておいた刀を手に取り、臨戦態勢に入る。すると青年はかつてのような穏やかな顔ではなく、鋭い目でナイフを引き抜いた。
「俺のひと声で外にいる仲間があのガキの喉を掻き切るぜ!お前ら武器を捨てろッ」
するとキサラリを奴の口に突っ込み、奴の首をそのままねじ折る。その早い行動とあまりの光景に体が固まった。
「ひと声出せるもんなら出してみろッ」
エクロクが駆け出し、側に立てかけてあった銃に手を伸ばす。しかしその背中に銃弾があたり、煙が尾形の銃口から上がった。
「エクロク助さん アイヌ語で命乞いはどういうんだ?」
「銃から目を離すな一等卒」と彼は杉元さんに銃を投げ渡す。窓を捲られると、別の男たちが窓から弓を構えているのが見えた。矢が牛山に向かって放たれるが、彼はエクロクの足を掴み盾にする。その隙に私は刀に手をかけ窓に向かって飛び出し、左にいた男の首を抜刀と同時に斬り落とす。そのまま地面に足をつけ、弓を持った男の体を斬りつけた。
アシリパさんを探し出し、村を駆け回る。杉元さんの声が響く中、私は向かってくる男たちを次へ次へと斬り付けていく。
また手が、体中が、血で汚れていった。
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ほほいほい(プロフ) - 烏羽さん» ありがとうございます。コメントを頂いたのが初めてなので嬉しい限りです。これからも応援していただけますよう精進いたしますので、どうかよろしくお願いいたします…! (2021年9月26日 21時) (レス) id: a999479a6f (このIDを非表示/違反報告)
烏羽(プロフ) - 思わず一気読みしてしまうぐらい最高でした!応援してます! (2021年9月26日 19時) (レス) id: 9dd84298a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほほいほい | 作成日時:2021年9月22日 23時