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第百八十九話 ページ48

「あんたも足が速くて驚いたぞ!それにあの剣さばき、あんたただ物じゃないな?」

 今度は私がキラウシに酒を注がれる。厳格そうな雰囲気だったのに酒が入ればこんなに朗らかになってしまうものなんだなと思いながら器に口をつけた。

 「まあ…小さい頃から走り回っていたからな。足の速さだけには自信があるんだ」

 「へえ〜そのうちこの世界で誰よりも速くなるんじゃねえか?」

 「………どうだろう。そうなるといいんだが」

 ずっと追いかけた兄の背中を思い出す。彼の足は本当に速くて、村の誰よりも足が速くなった私でも彼に追いつくことはできなかった。もう、その願いをかなえることすらできない。

 「ほらもっと食って大きくなれ!立派なシサムになるんだぞ」

 「いや私もう成人してるから…これ以上大きくなれないから…」

 アシリパさんはというと、周りの人たちに手を突然かざして嗅がせてくるのである。本人曰く蛇を触った手がにおわないか気にしているとのことだ。

 「え?ヘビ触ったの?怖かった?」

 「うん。臭くないか?いっぱい洗ったけど」

 「でもあんなに怖がっていた蛇を触ったなんて勇敢でしたよ。あのおかげで杉元さんは助かったのですから」

 顔の前に差し出された手を嗅ぐが、特に異様な匂いはしないと伝えると今度は彼女は尾形の元へと向かった。彼女の「臭くないか?」という問いかけに黙ったままずっと手の臭いを嗅いでいる。

 「尾形お前誰も傷つけずに谷垣を逃がしたそうだな、ナマエから聞いた。杉元はすごく疑ってたし私もちょっと不安だったけど。見直したぞ」

 彼はその言葉を聞いた後、一瞬固まり笑みを作った。

 「谷垣源次郎は戦友だからな」

 「…………?」

 その笑みに少し違和感があったのだが、彼は気が付けばまたアシリパさんの手を嗅いでいる。尾形に掌を向けるアシリパさんに、谷垣が話しかけた。

 「アシリパ、お前に大事な話が…いや…手のニオイはいいんだ…もっと大事な話だ」

 谷垣に差し出していた手の平をひっこめると、彼はまじめな顔つきになってアシリパさんに向き合う。

 「俺はフチのことを伝えに小樽から追ってきた」

 フチが死装束を作り始めたという話…アシリパさんと二度と会えなくなる夢を見た。

 谷垣の話を聞いている間にも時間は経ち、酒盛りをしていた男たちは酔っぱらって眠ってしまっていた。

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ほほいほい(プロフ) - 烏羽さん» ありがとうございます。コメントを頂いたのが初めてなので嬉しい限りです。これからも応援していただけますよう精進いたしますので、どうかよろしくお願いいたします…! (2021年9月26日 21時) (レス) id: a999479a6f (このIDを非表示/違反報告)
烏羽(プロフ) - 思わず一気読みしてしまうぐらい最高でした!応援してます! (2021年9月26日 19時) (レス) id: 9dd84298a0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ほほいほい | 作成日時:2021年9月22日 23時

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