第百八十八話 ページ47
「あとになってその存在ごと無かったことにしてしまうなんて…本当に自分勝手だ」
「確かに…何度も同じことを繰り返すのであれば、結果はわかりきっていたはず。ことに及ぶ前に気が付かなかったものですかね？」
「なあ杉元！！そう思わないか？」
アシリパさんがそう問いかけるも、彼は目を逸らしてこちらを見ようとはしなかった。
「男ってのは出すもん出すとそうなんのよ」
「うわッびっくりした」
「オイやめろッ」
いつの間にか後ろまで来ていた尾形に驚いてしまった。その横ではいつの間にか付いてきていたリュウを見た谷垣が「湯たんぽ！？」と驚きの声を上げていた。
私が斃したヒグマを、キラウシと呼ばれた男性が解体していく。その様子を私とアシリパさんと谷垣で眺めていた。
「ヒグマの毛皮を剥ぐことを俺たちは『着物を脱がせる』という言い方をする。刃物で剥ぐとき胸の部分だけ皮を二箇所少し切り残しておく。切り残しは最後に指でちぎって離す」
「皮を切り残すのは私たちのところではやらない」
「地域によっていろいろあるんだな」
「コタンが近いから解体したクマを持ち帰って送る儀式をしよう」
すると一緒に見ていたあの杉元さんに殴り倒された男が、何かを探すように辺りを見回していた。
「杉元ニシパは？」
「あっちで姉畑を埋葬してる。すぐに追いつくから先に行こう」
コタンへと戻れば直ぐにも儀式が始まる。私が斬り落とした両手も含め、ヒグマの頭部を祀った神輿を男たちが叫びながら持ち上げている。
「オココクセという叫びで、火の神様に熊が獲れたことを知らせる意味もある」
「オホホーイ！！」
男たちと一緒に叫び声を上げる杉元さんの横では女性たちが喜びの声を上げる。そのすぐ近くではキラウシが谷垣を連れて村長の元へと弁解しに行った。
「大丈夫かな谷垣…あ、村長笑ってる」
「どうやら誤解は解けたようだな」
＊＊＊
「酒飲んで仲直りしようぜシサムの旦那たち！！」
村の者たちが酒を持ってくると、私たちを温かく迎える。杉元さんと殴り合っていた男は彼と肩を組んで楽しそうに笑っていた。
「杉元ニシパお前強いなッ俺は喧嘩で負けたのはお前が初めてだ。娘を嫁にいらねえか？」
「あんたの娘ぇ？」
「疑って悪かった。もっと飲んでくれ子熊ちゃん」
キラウシが谷垣の横に座ると、既に出来上がっているのか真っ赤な顔をしながら谷垣の持つ器に酒を注ぐ。
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ほほいほい(プロフ) - 烏羽さん» ありがとうございます。コメントを頂いたのが初めてなので嬉しい限りです。これからも応援していただけますよう精進いたしますので、どうかよろしくお願いいたします…！ (2021年9月26日 21時) (
レス) id: a999479a6f (このIDを非表示/違反報告)
烏羽(プロフ) - 思わず一気読みしてしまうぐらい最高でした！応援してます！ (2021年9月26日 19時) (レス) id: 9dd84298a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほほいほい | 作成日時：2021年9月22日 23時
