第百八十七話 ページ46
ヒグマの悲鳴、アシリパさんの必死に止める声、前後に激しく腰を振る姉畑。はじけ飛ぶ谷垣のボタンの音。
これを地獄と呼ばずになんと呼ぶ………
近くにいた杉元さんは姉畑に向かって走り出し、それを見たアシリパさんが声を荒げる。
「杉元ッ丸腰で向かっていってどうするつもりだ！！」
「姉畑先生もう充分だろッヒグマから離れろッ」
しかし、彼の問いかけに姉畑は反応しない。それどころか体中の動きが停止していた。
「姉畑先生…まさか…！！」
「勃ったまま死んでる……」
まるで燃え尽きたように、なんと姉畑はそのまま死んでしまっていたのだ。
力なくヒグマの尻から落ち、そのまま興奮したヒグマによって彼の足はありえない方向へと曲げられる。ヒグマは杉元さんへと標的を変え、彼の前へと立ちはだかる。それを見た私はほぼ無意識に彼の元へと走り出していた。
「杉元何やってる、ヤチマナコに飛び込めッ」
「うおおおおおッ」
なんとか間に合い、杉元さんに振りかぶった腕を斬り落とす。
「Aッ！？」
「なんだあの坊主！？足がありえないくらい速いッ！！」
そのまま刃をヒグマの鼻の上で滑らせもう片方の腕も斬り倒す。完全に攻撃手段を失ったヒグマは私に覆いかぶさってきた。
「その動きも全て予測済みだッ！！」
そのまま下段へと構えて突き上げる。刃がヒグマの体を貫き、鍔も柄も自分の手もヒグマの体へと入っていった。ヒグマは動かなくなり、なんとかこの状況を切り抜けられたようだ。
＊＊＊
「安らかな顔だ。ウコチャヌプコロして力尽きるとは…鮭みたいな奴だったな」
姉畑の死体を見つめながらアシリパさんはそう呟く。
「ウコチャヌプコロ…」
「あのヒグマが人を殺してウェンカムイにならずに済んだのが唯一の救いだ。どうしてこんな馬鹿な真似を…熊に殺された人間は熊に好かれて結婚相手に神の国へ貰われていったのだという話もあるけど…」
「そのアイヌの話…姉畑先生は知ってたのかなぁ？」
「アイヌに詳しければ知ってたかもな」
「決死の想いも恋は成就せず…だったってわけか」
しみじみとそう呟く杉元さんに、アシリパさんはキッと睨みつける。
「おい杉元！この男を哀れむのか？やめろ。姉畑支遁が本当に動物を愛していたならどうして最後に殺すんだ？姉畑もどこかでウコチャヌプコロするのが良くないことだとわかっていたんだ」
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ほほいほい(プロフ) - 烏羽さん» ありがとうございます。コメントを頂いたのが初めてなので嬉しい限りです。これからも応援していただけますよう精進いたしますので、どうかよろしくお願いいたします…！ (2021年9月26日 21時) (
レス) id: a999479a6f (このIDを非表示/違反報告)
烏羽(プロフ) - 思わず一気読みしてしまうぐらい最高でした！応援してます！ (2021年9月26日 19時) (レス) id: 9dd84298a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほほいほい | 作成日時：2021年9月22日 23時
