第百八十三話 ページ42
「お前があの剥製屋の家での出来事のように首を搔っ切るならできただろうが…気絶させるとなるとそうも上手くいかんだろう。お前も谷垣も撃たれてたぞ」
「………ッ」
「命を奪われるという状況下の中、お前の考え方はちと甘すぎるんじゃねえか?」
髪を撫でつけながら私を見下ろす彼に、何も答えられなかった。
「いかなる状況であれ、敵に刃を銃を向けられるならこちらが殺す気でないと生き残れない…弱い奴は殺されるまでだ」
***
谷垣が連れていかれた方向へと向かうと、あの男たちのコタンへとたどり着いた。子熊の檻に両手を拘束された谷垣の前でなにやら村の者たちは彼を殺すか殺さないかもめている様子だった。その中で一人の中年の男が飛び出すと、大声で叫び始める。
「警察に連れて行ってもたいした罪にならないッ家畜の次は俺たちの女房や子供たちかも知れんぞ」
「ソンノ ソンノ!」
「俺たちのやり方でこいつを裁くッ鼻と足の腱を切るッ」
「待ってくれ、俺の話を聞いてくれ!」
その様子を私たちは物置の側で見守っていたのだが、話の流れからしてこのままではまずい。
「止めに行った方がいいのか…?」
「ははッやっぱりあの場で殺しておくのが正解だったな」
尾形のその意見を聞き、刀に手をかける。私が物置の影から飛び出したのと同時に、谷垣と男の間に一つの人影が入り込むのが見えた。
「ちょっと待った」
「…杉元さんッ!?」
「オマエもこの男の仲間か?どけッ!!」
男は杉元さんを見るや否や突然彼の顔を殴りつける。しかし杉元さんはその冷静さを崩さずに男を見上げた。
「まあまあ落ち着きなって」
しかし間髪入れずに男が再び彼を殴りだすと、周りの人たちも騒ぎ出す。
「杉元ッ」
側に駆け寄り男たちを止めようとしたアシリパさんを、彼は手の平を向けて制止する。彼女ににっこりと優しい微笑みを向けて、そのまま彼らの暴力を受け入れるのかという考えが頭に過る。
しかし次の瞬間杉元さんは目の前の男を殴り倒した。
「…………」
男はゆっくりと後退すると、その場で倒れてしまった。ああ、顎を狙ったんだな。後ろから異様な拍手の音がするかと思い振り返ると、今までで見たこともないような満足そうな顔で拍手をする尾形の姿があった。
「犯人の名前は姉畑支遁。上半身に入れ墨がある男だ」
杉元さんは谷垣の側によると、彼が身に纏うシャツのボタンに指を引っかけた。
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ほほいほい(プロフ) - 烏羽さん» ありがとうございます。コメントを頂いたのが初めてなので嬉しい限りです。これからも応援していただけますよう精進いたしますので、どうかよろしくお願いいたします…! (2021年9月26日 21時) (レス) id: a999479a6f (このIDを非表示/違反報告)
烏羽(プロフ) - 思わず一気読みしてしまうぐらい最高でした!応援してます! (2021年9月26日 19時) (レス) id: 9dd84298a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほほいほい | 作成日時:2021年9月22日 23時