第百八十二話 ページ41
男たちが私を警戒して銃を一斉にこちらに向ける。相手の手を斬り落とそうと、姿勢を低くして刀を構えた。
その瞬間、銃声が一つ響いた。しかし私も谷垣も銃弾は当たっておらず、男が発砲した様子もない。
「久しぶりだな谷垣一等卒」
銃を空に向けた尾形が、私たちの背後から姿を現した。
「尾形上等兵!!」
「オマエら仲間か?」
どうやら和人の言葉も話せるようで、尾形の銃を警戒した男たちは私たちに問いかける。
「いや…何と言えばいいのだろうか…事情はインカラマッ達から聞いている」
「谷垣、きさまは小樽にいたはずだ。何しにここへ来た?鶴見中尉の命令で俺を追ってきたのか?」
「え…?」
尾形のその発言で谷垣の顔を見る。しかし彼は焦ったような顔をしながら声を荒げた。
「俺はとっくに下りた!軍にもあんたにも関わる気はない」
「そうか…あの時尾形はいなかったから谷垣がまだ鶴見の手下だと勘違いしているのか」
「世話になった婆ちゃんの許に孫娘を無事に帰す。それが俺の『役目』だ」
谷垣がそう告げると、彼は弾を再び打ち込む準備をする。
「頼めよ。『助けてください尾形上等兵殿』と」
尾形の動きに、男たちも「銃を捨てろッ」と声を荒げる。
「おいッ!こんな時にやめろ尾形ッ」
「あんたの助ける方法なんて…あんたはこの人達を皆殺しにする選択しか取らないだろう。手を出すな!!ちゃんと話せば分かってくれる」
「皆殺し?」
男たちの表情が曇っていく。尾形の味方だと判断された私にまでその銃口は向けられた。
「……!!」
「ははッ遠慮するなって。近藤、このままだとお前だって殺されちまうぞ」
彼のその発言を聞き、少し迷った後に銃を構える男に向かって再び刀を構える。
「おいッ近藤まで…!!」
「テッポ オスラ!」
「俺に銃を向けるな。殺すぞ?」
尾形から途轍もない殺気が放たれると、茂みから突然一人の老人が姿を現した。
「テッポ アマ ヤン」
老人がそう男たちに伝えると、彼らは銃を下げた。アイヌの言葉で彼らに何かを告げられると、谷垣はどこかへと連れていかれてしまった。殺し合いは避けられたものの、根本的な解決にはなっていないように見える。
「尾形…何も皆殺しにする必要はなかっただろう…せめて私があの場で奴らを無力化させれば…」
「四人相手にお前一人でか?」
どく、っと心臓が勢いよく脈打つのを感じる。
39人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ゴールデンカムイ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほほいほい(プロフ) - 烏羽さん» ありがとうございます。コメントを頂いたのが初めてなので嬉しい限りです。これからも応援していただけますよう精進いたしますので、どうかよろしくお願いいたします…! (2021年9月26日 21時) (レス) id: a999479a6f (このIDを非表示/違反報告)
烏羽(プロフ) - 思わず一気読みしてしまうぐらい最高でした!応援してます! (2021年9月26日 19時) (レス) id: 9dd84298a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ほほいほい | 作成日時:2021年9月22日 23時