第百八十話 ページ39
「このあたりで最近家畜や野生の鹿を斬殺して粗末に扱う人間がいるらしく『カムイを穢す人間がいる』と…怒った現地のアイヌは谷垣ニシパが犯人だと誤解して殺気立っています」
その話を聞いたアシリパさんと杉元さんは、二人で顔を見合わせる。
「アシリパさん、さっきのオス鹿…」
「なにかあったのですか?」
そう問いかけると、二人は話始める。
鶴を獲っている最中に遭遇してオス鹿の惨殺死体…傷は明らかに人為的なものであり、側には人間の足跡が残っていたと。
「状況から考えれば同一犯だと思われますが…」
「そいつ…詐欺師の鈴川聖弘が言ってた囚人かも」
釧路に現れた囚人、まさかこんなタイミングよく遭遇することになるとは。
「アシリパさん、俺達で真犯人をとっ捕まえて阿仁マタギを助けに行こう」
「だとしたら…俺たちは谷垣を探しに行く。行くぞ近藤」
尾形がそう呟いた言葉が一瞬理解できず、一泊置いて尾形の目を見る。
「…………えッ!?わ、私が!?」
「杉元がアシリパと行動するなら、残り戦力になるのはお前しかいねえ。狙撃手の俺と近接に長けたお前が組めば大抵の状況は切り抜けられるだろ」
言うこと自体はもっともだ。もし戦闘となったとしても彼の援護があれば怖いものはない。
それに、私に殺人に対する罪悪感を取り消してくれる彼が側にいるのであれば……人を相手にすることがあったとしても、だ。
「……わ、わかった。引き受けよう」
彼の提案を受け入れると、インカラマッにこれまでの詳しい経緯について問いかける。
「四日前のことです。私たちは地元のアイヌの男たちと出会いました」
そのうちの一人…鉢巻を目深く頭に縛り付けた中年の男が、谷垣の持っていた村田銃に見覚えがあったらしい。彼は以前二瓶と狩りを行ったことのある人物のようで、その銃が二瓶のものだと見抜いたという。
「あの出来事がその後、まさかあんな事態になるとは…」
「ハンッ!!占い師のクセにぇ?」
よほどあの出来事を根に持っているのか、アシリパさんはまるで揚げ足を取るようにインカラマッにつっかかる。
その後三人で森の中を歩いていると、木を無心に滅多切りにしている男を見かけたと言う。
『ニシパ。何をしてる?』
チカパシが話しかければ男は異常に焦った様子で彼らの方を向いたというのだ。流石に怪しいと感じたのか、谷垣がに向かって話しかけたという。
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ほほいほい(プロフ) - 烏羽さん» ありがとうございます。コメントを頂いたのが初めてなので嬉しい限りです。これからも応援していただけますよう精進いたしますので、どうかよろしくお願いいたします…! (2021年9月26日 21時) (レス) id: a999479a6f (このIDを非表示/違反報告)
烏羽(プロフ) - 思わず一気読みしてしまうぐらい最高でした!応援してます! (2021年9月26日 19時) (レス) id: 9dd84298a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほほいほい | 作成日時:2021年9月22日 23時