第百七十二話 ページ31
アシリパさんは岩場へと移動すると、しゃがんで手元をいじり始める。それを杉元さんは不思議そうに見つめていた。
「何やってんの?」
彼女が移動をすると、その場には小さな木くずで積み上げられた小さめの岩が置いてあった。
「変な鳴き声のエルムがいたから山杖を削って罠を作った。ロシアの少数民族がリスを捕る時に使う『プラーシカ』という罠だ。本当は石じゃなくて丸太を使う。エサのお米を食べようとここに触れると、組んだ木が外れて石が落ちてくる」
「へえ、確かに普通リスは森に生息しているから、そりゃ丸太を使いますよね」
感心しながらそれを見つめていると、背後からゴトッと重いものが落ちる音がした。
「あ!エルムが獲れた。下山したら森に入って丸焼きにして食べよう」
「ネズミ煎餅かよ」
アシリパさんが摘まみ上げた薄っぺらくなったネズミを見るも、杉元さんは少しがっかりしたような顔をした。しかしそれとは対照的に何故か尾形は瞳を補足してネズミをじっと見つめている。猫かお前は。
次々に石の下敷きになるネズミを捕まえていけば、それなりに腹は満たされる量にもなってくる。
「鹿肉が食べたかったぜ」
「あの量のヒグマを相手にするのも骨が折れますしね。また下山したらいいものを狩りましょう」
「あっちの罠も獲れたッ」
アシリパさんが嬉しそうに駆け寄った先には、なぜか白石が頭を罠に挟まれて倒れていた。
頭から出血する白石は放っておくとして、私たちは下山していく途中も次々とネズミを獲っていく。
「そのネズミ、下山するにつれてだんだん獲れなくなってきたな。山の上にはいっぱいいたのに」
「高いところにしかいない変なネズミなのかもしれない」
大分地上も近づき、雪は減って植物が顔を出す。このまま栄養を取らずに動き続けるのも危険なのでいったんネズミを食べるための準備をする。
「またネズミかぁ」
「まだ振り切れたとは限らないからな。銃を使えば居場所がばれてしまうから鳥も撃てないんだ」
「あとで『くくり罠』えお見回ってこよう。木ねずみが獲れてるかも」
「ねずみばっかり〜ッ」
白石は不満そうに茂みへと寝転がってしまった。ネズミを炙り毛を取り除けば食べられる状態にもなる。それを一つ手に取り、味のしない肉を齧っていく。ずっと双眼鏡に目を通し、敵を偵察し続けている尾形に、アシリパさんは肉を持って駆け寄った。
39人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ゴールデンカムイ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほほいほい(プロフ) - 烏羽さん» ありがとうございます。コメントを頂いたのが初めてなので嬉しい限りです。これからも応援していただけますよう精進いたしますので、どうかよろしくお願いいたします…! (2021年9月26日 21時) (レス) id: a999479a6f (このIDを非表示/違反報告)
烏羽(プロフ) - 思わず一気読みしてしまうぐらい最高でした!応援してます! (2021年9月26日 19時) (レス) id: 9dd84298a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ほほいほい | 作成日時:2021年9月22日 23時