第百四十五話 ページ4
「ほら見ろこの耳たぶ！アイヌは耳たぶが分厚いんだ。シンナキサラじゃない！」
「ただの福耳にしか見えねえけどな」
杉元さんがエクロクの髪をめくり耳を見せるが、尾形は相変わらず疑ったままだ。
「なあ尾…」
「ウンカ オピウキ ヤン！」
窓から女性の声が響く。思わずそちらを振り向くと、一人の女性が助けを求めるような顔でこちらを見ていた。だがすぐに女性は外にいた男に取り押さえられる。
「いまのご婦人はなんと？」
「知らない方がいい。和人をよく思わない者もいる。でも歓迎はするよ、今夜は酒でも飲んで…」
「ウンカ オピウキ ヤン！」
エクロクの言葉は、モノアの必死な叫びによって遮られる。彼女は顔に汗を浮かべ、強い眼差しを向ける。その様子が、私には異常に思えたのだが、怒ったエクロクによって外へと叩き出されてしまう。
「なにか奥さんの気に障ったかな？失礼があったらすまない」
「いやいや…」
「…杉元さん、やっぱりあの女性少し様子がおかしい」
「ええ？Aまでそんなこと言う？よしわかった！！さっきそこの『シントコ』の裏に落ちてるのが見えたんだが…」
そういうと杉元さんはそこからあるものを拾って戻ってくる。その手には三つに分かれた長い棒が握られていて、それにはとても見覚えがあった。
「え…杉元さんそれは…！」
「これを使って見せてくれ。ほんとのアイヌなら使い方を知ってるはずだ。ちなみに俺とAはアシリパさんほどうまく使えなかった」
それを持った杉元さんは手始めにと牛山の前へ立つ。
「まずは牛山やってみろ！」
「え？俺？何で俺が…」
そう言いながらも彼はキサラリを受け取ると、少し考えた後体をくねくねと動かす。
「あたい未亡人…戦争で夫を亡くしてひとりぼっち」
「ノリの割には設定が重いな」
「でも体は正直でうずくのよ。でもそんな時はこれがあれば満足できるの」
すると彼はキサラリを背中へと回し、孫の手を扱うように背中をそれでこすりだした。
「はあ〜痒い所に手が届く」
「全然違うッ！！」
杉元さんは牛山からキサラリをぶんどると、ずっと正座して黙っていた村長にそれを差し出す。
「じゃあ次！レタンノ エカシ」
名前を呼ばれると、彼の体が跳ねる。
「いまのやり取りで何してほしいかわかりますよね？」
それを受け取るも、ずっと固まっている彼に尾形は「早くやってくれよ爺さん」と急かす。
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ほほいほい(プロフ) - 烏羽さん» ありがとうございます。コメントを頂いたのが初めてなので嬉しい限りです。これからも応援していただけますよう精進いたしますので、どうかよろしくお願いいたします…！ (2021年9月26日 21時) (
レス) id: a999479a6f (このIDを非表示/違反報告)
烏羽(プロフ) - 思わず一気読みしてしまうぐらい最高でした！応援してます！ (2021年9月26日 19時) (レス) id: 9dd84298a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほほいほい | 作成日時：2021年9月22日 23時
