第百六十九話 ページ28
突如、杉元さんのものではない銃声が一つ響く。後方では尾形が既に銃を構え、たったの一発で斜線上にいたシカを二頭も貫いていた。
「すごいぞ尾形!さすがだな」
更に一発打ち込めば一瞬でシカの死体が三つ転がる。皮を剥げと指示するアシリパさんに続いてシカに近づこうとするも、そこにあったはずの姿が一つ見当たらないことに気付く。
「あれ?白石はどこに行った?」
辺りをキョロキョロ見回すと、いつの間にか全裸になっていた白石がフラフラと歩いているのが目に入り、思わずその場で情けない驚きの声を上げてしまった。
「白石を捕まえろ!低体温症で錯乱しているッ」
「パウチカムイに取り憑かれた!!」
急いで白石を背後から捕まえると、尾形が申し訳程度に彼に服を着せていく。一体私たちは何をしているのだろう。急いでシカの体内に白石を押し込み、最悪の状況は避けられる。
「じゃあ私の体格なら白石と同じシカにも入れそうだから、あんたはもう一つのシカの方に入ってくれ」
「…いや、お前はこっちだ」
「え?」
急に首根っこを尾形に捕まれ、ずるずると空いている方のシカへと押し込まれる。
「うおあああッやめろ尾形!!私尾形よりも白石と一緒にいた方が安し…むぐッ」
そのまま強制的に二人で狭いシカの体内へ一晩過ごすことになってしまった。向き合う形でお互い密着する形になってしまい、相手は知らないだろうが正直男女でこのような状況になるのはいかがなものかといたたまれなくなってしまう。
「おい、いきなり何をするんだ尾形!」
しかし私の苦言に答えることもせず、彼は突然私の着物の合わせへと手を伸ばし、それを左右に広げる。一体何が起こっているのか理解するよりも速く、奴は突然シャツを私の首元へと捲り上げた。
「……やっぱりな、おかしいと思ったんだ」
さあ、と血の気が引いていく。今尾形の目の前にはサラシを巻いて潰した胸元があり、それを見られたということは私の正体がバレてしまったということになる。
「お前、淫魔に取り憑かれた男のと密着して一晩過ごそうと思っていたのか?」
「それは……ッ」
「まあいい、本題はそれじゃねえ」
奴は何もすることなく、ただ確認だけするとシャツを戻し合わせを整える。そしてその真っ黒な目でまるで獲物を捕らえるように私の目を見つめると、その本題について尋問を始めた。
「見たところお前は殺人の経験が少ない」
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ほほいほい(プロフ) - 烏羽さん» ありがとうございます。コメントを頂いたのが初めてなので嬉しい限りです。これからも応援していただけますよう精進いたしますので、どうかよろしくお願いいたします…! (2021年9月26日 21時) (レス) id: a999479a6f (このIDを非表示/違反報告)
烏羽(プロフ) - 思わず一気読みしてしまうぐらい最高でした!応援してます! (2021年9月26日 19時) (レス) id: 9dd84298a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほほいほい | 作成日時:2021年9月22日 23時