第二十六話 ページ28
「ごちそうさま、出口は向こうかな?」
「尾形上等兵をやったのはお前だな?不死身の杉元」
杉元さんが疑われている。実際に川に落とす一撃を与えたのは私だ。
「違うっアイツをやったのは…」
「A!」
杉元さんの顔を見る。彼は毅然とした態度を全く崩しはしない。何か作戦があるのか、それとも軍人としての経験からだろうか。
銃を構えた兵士に座れと命じられる。
「お前らそっくりだな?銃で俺を殴ったのはどっちだ?印をつけとけよおデコとかに」
すると彼の煽りに腹を立てたのか、小さな声で「殺してやる」とつぶやいた。席にもう一度腰掛けると、団子を食べる男に杉元さんは吐き捨てた。
「人違いだな。俺は杉元なんて名前じゃねえ」
「一度だけ『不死身の杉元』を旅順で見かけた。少し遠かったが…鬼神のごとき壮烈な戦いぶりに目を奪われた。
あの時見たのはお前だ。蕎麦屋の前での大立ち回りを見てピンときた。」
「俺は第二師団だ。旅順には行ってない。やはり人違いだったみたいだな」
すると男は串から団子を一気に引き抜き、話を続けた。
「なぜ尾形上等兵は不死身の杉元に接触したのか……それはお前が金塊のありかを示した入れ墨の暗号を持っていたからだ。…とここまで話が繋がることを恐れて我々から逃げようとした。」
一気に顔を寄せ、小さな声で囁く
「刺青人皮を持っているのだろう?どこに隠した?」
だが杉元さんは相変わらず調子を崩さない。それどころかおどけた態度で話を続けるのだ。
「金塊?刺青?何を言ってるのかさっぱりだが、俺の荷物はもう調べただろう?ケツの穴まで調べてくれて構わんぞ。お前らの大将はアタマ大丈夫なのか?」
「脳が少し吹き飛んでおる」
一人の兵士が笑い出したのを皮切りに、杉元さんも笑い出す。なんなんだよこれ。これが戦争に行った者たちの余裕なのか?
瞬間、私の横を何かがものすごい速さで何かが横切った。横を見ると、信じられない光景が目に入ったのだ。
男が持っていた串、それを杉元さんの頬を刺し、貫通している。あまりの異常な状況に、冷や汗が背中を伝う。
「…たいした男だ。そこの『娘』に比べて、瞬き一つしておらん」
「…!」
「やはりお前は不死身の杉元だ。
だがな、お前がいかに不死身で寿命のロウソクの火が消せぬと言うのなら、俺がロウソクを頭からぼりぼり齧って消してやる」
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作者名:ほほいほい | 作成日時:2021年8月26日 23時