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また今度 ページ7

彼の腕の中で進んでくゲーム画面をぼんやり眺めながら赤ワインを片手に思い返すさっきの事
『ねぇ…』
「んー?」
『さ、っきの…ぷろ、ぽーず?』
「半分そのつもり」
『はん、ぶん?』
「前にAちゃん言ったでしょ?「今のあたしじゃ返事出来ない」って。だから…Aちゃんの気持ちちゃんと待つ。でも俺の気持ちは変わらないよって伝えたくて。気持ちは言葉にしなきゃ、伝わらないから」
『ことば、に…』

あのイベントの前、保護者会による説教会に向かう途中…翔君から飛び出たプロポーズみたいな言葉に確かにそう返した。一瞬悲しそうな顔をした彼も…忘れていない。でも…声が出なくなって1番辛かったのは、仕事や翔ちゃんのお盆が出来なかった事よりも…彼の名前を呼べない事だったし、リハビリで初めて声が出るようになって最初に呼んだのは、翔ちゃんではなく翔君の名前だった
自分の中に円グラフがあったとして、今まではその大半を翔ちゃんが占めてて残りを翔君とナイトと仕事。でも…入院を経て翔ちゃんと翔君の割合が五分五分になって来た気がする
今の自分では返事出来ないって言って一ヶ月ちょっとで変わりそうになってる、自分自身に戸惑ってどうしていいか分からないのが正直なところで…
トントンっと彼の腕を軽く叩くと翔君の腕が開く。スルっと抜け出て引き出しにあるノートとボールペンを手にしてソファーの前に座ってペンを走らせる。翔君が言う通り気持ちは言葉にしなきゃ伝わらいない。でも今のあたしじゃ伝えきれないから…考えてる事、思ってる事を全部書き出してると彼が覗く気配。どうせあとから見せるし、隠す事もせずに只管ペンを走らせた


ノート2ページ程書いたあとペンを放って床にそのままゴロンっと横になると…近くに伏せていたナイトの横腹に顔を埋める。ゲームの音が止まってるから多分翔君はノート読んでるんだと思うけど、彼の言葉は嬉しいのに自分が分からなくて… 顔があげられずにいると、フワフワと頭を撫でられる
「ねぇ、コレほんと?」
『…ん』
「もしかして…翔さん離れ?」
彼の声にガバっと顔をあげる
『しょ、ちゃん、ばなれ…』
写真集の相談で行った時も…いつも翔ちゃんに相談に行く時と比べて圧倒的に時間短かったし、翔ちゃんって言う回数も減った。翔ちゃんの思い出を話しても悲しくなったり寂しくなる事もなくなった…
『ほんと、に…はなれ、ら、れたの…かな…』
「分かんないけど…」
『た、しかめ、なきゃ…』

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作者名:福招猫 | 作成日時:2021年9月20日 23時

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