野上さんは天使ですか？6 (ページ39)

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記念の日だからページ39

まだ実感が湧かないまま、ラジオブースを出るとスタッフさんやマネージャーさん達から拍手が起こった
「御協力頂いたおかげで、彼女にちゃんと伝える事が出来ました。ありがとうございました。これからも宜しくお願いします」
翔君が深々とお辞儀したのが見えて、慌てて右に習えで頭を下げる
「上野さん、野上さんおめでとうございます！」
『ありがとうございます』
スタッフさんから手渡された花束。大好きなパインと同じ黄色い花にピンクのリボン。大好きな彼の役を背負わない色。折角引っ込んだ涙がまた出て来そうだ

『ねぇ』
「ん？」
並んで歩く帰り道。左手に抱えた花束と、右手に繋がる暖かい翔君の手
『いつ決めたの？』
「今日言うって決めたのは、十六夜の日。祐に十三夜のこと聞いて…月ってさAちゃんみたいだなぁって思ったんだ」
『あたし？』
「最初はパインだと思った。甘酸っぱいパインみたいに明るい笑顔には太陽だって勝てないって。でもそうじゃないって分かった。いつも明るかったり、着物来てる時は凛として振る舞うけど…本当は翔さんの事で俺が思ってた以上に凄くいっぱい悩んでて。翔さんっていう太陽に照らされて輝く月みたいだなぁって」
翔が太陽であたしが月…昔2人でこっそり屋根裏部屋から天体観測をした時翔が「太陽と月は双子みたいだ」って言ったのを思い出した
「だからね、月が太陽の光を1番受ける満月の夜に言いたいって思ったの。それに今日はAちゃん完全復帰記念日だからね」
月明かりの下で照らされて微笑む翔君は、やっぱり夜空に輝く月や星々よりも綺麗だった
「俺は月を照らす太陽にはなれないけど、月と同じ夜空で隣に並ぶ星になる」
翔君は左手で星型のネックレスを掲げた。それは彼にとって思い入れ深い役の、ライブの時にしか着けないって言っていた星のネックレス
『じゃぁ、あたしは付き合うよりもずっと前に翔君を貰ってたんだ』
立ち止まり繋いだ手を1度離し、右手で土星と星のペンダントを持ち上げにっこり笑うと、手首でぼんやりと黄道十二星座が光った
「本当だ、俺プレゼントしてた」
照れくさそうに笑った翔君と手を繋ぎ直して歩き始めると、目に入った北極星。ほとんど動かないこの星を昔の人は夜の道標にしていた
『翔君が星ならきっと北極星だね。あたしが迷って周りが見えなくなった時の道標。翔君いなかったら迷子だ』
「俺も迷子になるよ。方向音痴だもん」
『じゃぁ迷った時2人でゴールを探そうか』
「そうだね」