雑誌 ページ35
雑誌の取材は公園で濱野と2人。適当にお話しててくださいと言われ、歩きながら本当に他愛もない話しをする
「え、じゃぁこの後うえちゃん来るんだ？」
「うん。流石に別ページに載るのに同じ服じゃアレだから着替え持って来てくれる」
「仲良いみたいで安心した」
「この前喧嘩しちゃったけどね」
「マジか」
すっかり冷たくなった秋の風がカラカラと落ち葉を揺らす。彼女が完全復帰したらまた“うえのがみ”で曲出せるかな…彼女の作る音の世界観が凄く好きだ
「泣かせちゃったし、梅さんたち居なかったらAちゃん、財布とパスポートだけでニューヨーク行っちゃうとこだった」
「危なっ…野上がうえちゃん泣かすって相当だな…」
「言い過ぎたって反省してる。つい怒ると皮肉を言ったり毒づいたり…言い返されたら更に上を行く言葉で批難して、相手が傷つくって分かってるのに言っちゃうんだよね」
「あー…お前と喧嘩すると怖いもんな…」
「焦って声枯れるまでずっと外郎売やってて…止めてもマイク前に戻れなきゃ自分の存在意義はないって言うから… ─俺が好きになったのは、マイク前でまるでキャラがそこに居るような錯覚を起こす芝居を魅せる、上野Aだ！焦って無茶して完全に声が出なくなっても知らねぇからな！─…って」
「凄い心配してる気持ちも分かるけど…ソレはキツいわ」
「気が付いたら泣きそうな顔で彼女が部屋を出て行ってた」
話数は忘れたけど昔見たコナンで「1度口から出した言葉は、もう元に戻せない。言葉は刃物。使い方を間違えると厄介な凶器になる」ってあったのを思い出した。あの日ご住職にも「言葉で傷付けることも包むことも出来る」って言われた…声優という声を…言葉を生業とする身ととして耳が痛かった
「搭乗口に向かう流れにAちゃんを見つけ瞬間、正直陸上部時代並みのタイムで走ったと思うよ」
「飛行機乗ろうとしてたの？」
「あとから聞いたら、人の波に押されただけだったらしい」
思い返せば国際ターミナルで人の往来が激しい中、搭乗口に向かう(ように見えた)彼女を捕まえ怒って泣くのを誤魔化すように抱き締めて…まるでドラマのワンシーンじゃないか。本当撮られなくて良かった
「仲直り出来て良かったじゃん」
「ホントそれ」
「…俺ら2人の結婚式呼んで貰えるの楽しみにしてるからね」
「はっ!?俺ら!?」
「保護者会とかM4!!!!とか」
ニヤッと笑う付き合いの長い同期はバチくそにカッコよかった。…悔しいから、ぜってぇ言わねぇけど
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作者名：福招猫 | 作成日時：2021年9月20日 23時
