月夜 ページ3
呑み会という名のAちゃんのリハビリのための集まりがお開きになり、白井さんが選んでくれてたお店だから流石の美味しさだった。久しぶりにいっぱい喋った彼女は、いつもより呑む量自体は少なかったけど…凄く楽しかったらしく、さっきから繋がった彼女の右手がずっとリズムを刻んでる
「楽しかった?」
『ぅん、ひさしぶり、に…みんな、と…はなせ、た』
ふふふって笑う彼女が嬉しそうに夜空を見上げてその視線を追うと月が光り輝いていた
『ちゅう、しゅう、の…め、いげつ…だって』
「だからか…綺麗」
あまり意識して見上げて来なかったけど、彼女と付き合うようになってから星好きのAちゃんの影響で仕事終わりとか夜にナイトの散歩行く時とか…見上げるようになった
「本当…月が綺麗だね」
ピクっと彼女の刻むリズムが止まった
『…きっと、いっしょ、に…みてる、から…』
「素敵〜」
夜空を眺める時いつもロマンチックで…舞台女優だったせいか言い回しがすごく素敵…
『…あ、』
「ん?」
『なん、でも…ない』
「気になるじゃん」
『…あきの、しんわの、きせつ、だな…って』
少し視線が泳いだ後にボソッと呟いた彼女の視線の先は月明かりと街灯の明るさで星の見えにくい暗い空
何か言い淀んだように見えたけど…気の所為だったかな
「前に教えてくれたアンドロメダとペルセウスだ」
『あたり』
去年の年末に大分と盛岡で電話しながら、1400km離れた天体観測した時に彼女が話してくれた秋の神話
「古代エジプト王ケフェウスとその王妃カシオペア」
『むすめ…あんどろ、めだひめ、の…じまん、ばなしが…かいじん、ぽせいどん、の…いかりに、ふれ…ひめは、うみで…いけにえ、に』
「化鯨に食べられそうになったところへ、メデューサ退治の帰りだった、ペルセウスがペガサスに乗って助け出し、2人は夫婦になった…ペルセウス、カッコよすぎじゃない?」
『ぎりしゃ、しんわ、の…えいゆう。ぜうす、むすこ』
「全知全能の神の息子ってチートかよ…そりゃカッコいいわ」
再び彼女の指がリズムを刻見始める。前に翔也さんがラジオで、祐は常に頭の中に音楽が流れてるタイプの人だって言ってたけど…多分Aちゃんもそのタイプ。産まれた時から周りに音楽があって、本人も演奏してたから、音楽が染み付いてるんだろうな…今は歌えてないけど前までは、ナイトをブラッシングしながらとか、キッチンで作りながら鼻歌を口遊んでるのをよく見てた
中秋の名月…でしたね
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作者名:福招猫 | 作成日時:2021年9月20日 23時