野上さんは天使ですか？6 (ページ13)

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兄から妹へページ13

翔君が持って来てくれた卒アルに目を落とす
「大丈夫、読み終わるまで傍にいるから」
『…ありがと』
ふぅっと深呼吸してから懐かしい翔の字を目で追う

いつか帰って来てコレを読んでるAへ

今日は高校の卒業式でした。卒業生代表でピアノ演奏する打ち合わせの為Aより先に学校に行って、クラスで先生にAが式に出席しない事を知らされました。声優になる勉強をしたいと言っていたし、都内の大学を受けていたのも知っていたのに18年共に生きて来た大事な妹との、急な別れに正直戸惑っています

今まで離れて居てもAの考えが見えるように分かったのに、半年くらい前から少しずつ遠くなって最近全然見えません。寂しくない？辛くない？
俺は、Aが隣に居ないことが…寂しいです

でもAの夢を応援するって決めたから、離れた場所からずっと応援しています

それと1つ報告
本当は、家族でジャズ奏者って憧れてたけど…Aの夢を応援する事を決めた時俺にも夢が出来ました。負けず嫌いなお前は絶対声優としていつか大きなな舞台に立つようになる。そうなったら、俺の作る曲Aに歌ってもらう事が今の夢です

お互い夢が叶うその日まで、場所は違えど一緒に頑張ろう

でももし躓きそうになった時、お前には誰よりも近い兄貴が居ることを忘れないでください

卒アルをパタンっと閉じて深呼吸をする
『しょう、くん』
「ん？」
『しょーのへや、いこう』
「なに、急に」
『しょーの、ゆめ…かなえたい』
「ゆめ？」
もう一度さっきのページ開いて翔君に渡して窓を全開にする。深く息を吸い込むと、微かに残る煙草の向こうに僅かな硫黄の匂い。昔は気にならなかったけど、この家を出てから硫黄泉の匂いが懐かしい
「え、すごい…翔さんいいお兄さんじゃん…」
振り返ると少し涙目の翔君
『じまんの、あに…ですから』
「夢って翔さんが作った曲をAちゃんが歌うっていうのだよね」
『うん。もしかしたら…しょーの、つくった、きょく、あるかもしれない』
「あ、そういう」
窓を閉めて、さっき出した葉巻の箱を片付けてから翔君と階段を降りて廊下をすすむ。かつては自分の部屋と1つだった兄の部屋。兄離れのために外してこの家を出たドアプレート… きっとドアに戻したのは翔だ

思春期頃、異性双生児故の身長で悩んで反抗期を迎えたとき翔は身長の事であたしが傷つかにように、いつも扉になって悪意を入れないよう守ってくれていた翔らしい