【文スト】転生したら横浜市民になってしまった (ページ12)

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与謝野さんと戦えば、結果的に怪我無しだよページ12

「え？基次郎ちゃんが…？」

その知らせがあったのは本部に帰って来て直ぐだった。基次郎ちゃんが探偵社員とケンカして、見事に負けたと。

本当はもっと早くに報告したかったそうだが、私が出かけていたから出来なかったらしい。
うん、ごめん。めっちゃ楽しんでたわ。

「怪我は？」

「それが、怪我が無いんです…」

私の部下が不安そうな顔で告げる。
絶対、与謝野さんじゃん。与謝野さんに当たるとは運が悪いな…いや、探偵社相手の時点で悪いか。

「それと…泉鏡花も任務失敗、探偵社に連れ去られました」

「は？」

おっといけない、随分と低い声が出た。
顔を強ばらせてしまった部下に、へらりとした笑顔を向けておく。
ごめんよ、わざわざ報告しに来てくれたのにこんな態度取っちゃって。

席を外すと言えば、心配そうな顔をされたので大丈夫だと笑う。なんの心配されてんのか知らんけど。

歩き慣れた通路を早歩きで通り、ノックを三回。

「失礼しますよ」

「あ！Aー！」

「ああっ、エリスちゃん…！」

「まだドレスが…」と言い、此方に走ってくるエリス嬢の後を追いかける森さん。
エリス嬢、大変可愛い。大変可愛いが、挨拶は程々に済ませて森さんの方を向いた。

「森さん、私にはなんの相談も無しですか」

「相談？それならお互い様じゃないか」

一体なんの事かとしらを切れば、分かっているだろう、と返された。
もちろん、分かっている。
私は、森さんが私になにも言わずに、基次郎ちゃんと鏡花ちゃんを探偵社に送り込んだことを怒っており、森さんは、私が毎度毎度なにも言わずに探偵社に行くことを怒っているのだろう。……多分。

「仕事をしてくれれば、後は別に構わないのだよ。君は私の邪魔をするような子じゃないからね。でも、私だって、心配くらいするのだからね」

「……また、ご冗談を」

ありえない、心配なんて。怒ってるんだろう？

森さんに、私はあなたの何なのかを問えば、彼はキョトンという顔をした。

「秘書じゃないのかい？てっきりそう思っていたのだが」

あぁ、なんだ、そうか。ホントに怒ってないのか。当たり前のように、秘書だと言ってくれるのか。

「なら、ちょっとくらい相談して下さい…」

なにも言われなかったら、秘書じゃないんじゃないかと、切られてしまうんじゃないかと、思ってしまう。

…なんだ、私も、怒ってるんじゃなくて、心配してるんじゃないか。