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彼が─ルークが、地に足を縫い付けられるほど見蕩れたという光景をぜひとも見てみたかった
彼の行動を非難していたというのにヴィルはそう思ってしまった。そう常に新しい美を求めることこそ彼であろう
とても素敵だったよ─と、ルークは語る
はじめ、あまりに唐突な展開に狼狽していた彼女は、ある一点から冷静さを取り戻し怒涛の巻き返しをしたという。見事なものだ
ルークから見てアズールのアレは、ちょっとした揶揄いの一種に見えたが、彼女からすれば違っただろう。瞳の奥に恐怖をひた隠しながらも己の立場を強かに利用するさまは良かった
最後に笑ったのはアズールの方であったが、応酬の配が上がったのは神の子の方に見えた。それでも悔しげに顔を歪めるさまの、なんと人間臭いものか。絵画に描かれた聖女か天使の如き容姿であっても、その中身はそれ相応の感性と感情であろう
人間であって人の営みの奇跡の中で生まれ落ちなかった彼女の、あの人間のようなさまが、とても美しいと思えた
ヴィルはどう思うだろうかと、目前の彼を見遣る
己は彼女の、容姿や境遇と中身のアンバランスさに惹かれたが、彼は完璧的な美を好むから、神の子にもその身に合った振る舞いを求めるかもしれない
その点では相容れないかもしれないが、他人に見出す美などそれぞれであることも互いに重々承知だ。いずれ論じ合うのも良い。理想とする美について話すヴィルもきっと美しいだろうから
──ルークの視線も気にせずヴィルは考え込んでいた。彼の無体を機に、神の子と接触できないだろうかと
ずっと気になっていたのだ。あの完璧ではない美しさをどうにかメイクアップしてみたい。けれど彼女はルークに気付いていなかったというし、詫びを理由にコスメを送られた所で困るだろう。ヴィル自身も、しっかりと見たことの無い彼女にどの型のどの色が似合うか─など流石に分からない
やはりまだ無理だろうかと一度諦めた
「ルーク」
「なんだい?」
「次に彼女が困ってたら、見蕩れて突っ立っておくなんてマヌケは晒さないでよね。アズールは諦め悪そうだし」
「ウィ。もちろんだよ、麗しのヴィル」
仰せの通りに─と、その言葉を満足気に受け取ったヴィルが、ルークのもうひとつの行動─やらかしにまた頭を抱えることになるのは、あと半月足らずのことである
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藤宮(プロフ) - 紅さん» ありがとうございます〜!この小説をどうぞよろしくお願いします! (8月17日 23時) (レス) id: 70681114dc (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (8月12日 0時) (レス) @page25 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - 晏昊さん» ありがとうございます。長らくお待たせしましたが亀更新で頑張ります〜! (2023年3月6日 0時) (レス) @page21 id: 73feed36fe (このIDを非表示/違反報告)
晏昊 - 好きすぎて一気見しちゃいましたw続きがすごく気になります!頑張ってください!待ってま〜す!!! (2022年5月3日 1時) (レス) @page21 id: 92be24dccc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤宮 | 作成日時:2022年1月5日 2時