61・かつての夢の話 ページ12
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「＿＿行くったら行くの！！」
小さな手を握りしめてボロボロと涙を零すAをリリアもマレウスも困ったように見つめていた
「A、少し落ち着いて」
「いーくーのー！」
「ど、どうどう…」
どんな機嫌取りをされても何を言われても、彼女は「行く」の一点張り。マレウスはすでにお手上げで、シルバーで子育てには慣れただろうリリアも手を焼いていた
＿＿人間は脆いから、このまま枯れてしまうのでは。二人は顔を見合わせる。Aがこんな風に我儘を言って泣き散らしたのは後にも先にもこの時だけだろう
事の発端は、徐々に芽生えた不満の感情だった
妖精達と森で暮らしていたときの彼女はあまりにも無知で、何も考えないまま「彼女達」と過ごして日々を消費する。……それだけで良かったのに
四歳でマレウスと出会って、城で暮らすようになって、外を知って＿＿＿欲を知った
わけも分からぬまま神の子だと、高貴な存在だと言われて祈られて、なのに外ではこれが常識で。彼女には到底理解できなかったのに、みながそれを当たり前とするからそれに倣うしかなかった
漠然と記憶に刻まれた「神の愛し子」だという事実を受け入れて、祈りも呪いも聞き入れる。それが彼女の形だと世間が言っていた。……そうなるべきだとは解っていたけれど。幼い少女には耐え難かった
どこでもいい。どこでもいいから逃げ出したい
＿＿＿誰か！
そんな頃、偶然使用人の「熱砂の国の大富豪」の話が聞こえた。私を招待したいという手紙が何度も届いていると。「夕焼けの草原」からも同様の手紙が送られ続けているとも聞こえたが、多くは覚えていない
ただ彼女はその話に乗っかって、そこへ行きたいと言った
不満を覚えてから三年耐えた七歳の頃。はじめて、マレウスとリリアに我儘を言った瞬間だった
まぁ当然、受け入れてはもらえず話は冒頭に戻る
「そんなに泣いては水分が」
「行くの！」
「言い分は分かった。しかし」
「いや！行くもん！」
「A……」
粘りに粘って主張し続けること五日。遂に彼女は勝利した。護衛は着いて来るがマレウスもリリアも共に来ない、滞在期間は一週間の己だけの旅
どこに行ったって、少女は神の子。それはこの世界の共通認識。だというのに、小さな家出のようなそれに、窮屈なこの立場を抜け出せるなんてバカみたいに喜んだ
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藤宮(プロフ) - 紅さん» ありがとうございます〜！この小説をどうぞよろしくお願いします！ (8月17日 23時) (
レス) id: 70681114dc (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (8月12日 0時) (レス) @page25 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - 晏昊さん» ありがとうございます。長らくお待たせしましたが亀更新で頑張ります〜！ (2023年3月6日 0時) (レス) @page21 id: 73feed36fe (このIDを非表示/違反報告)
晏昊 - 好きすぎて一気見しちゃいましたw続きがすごく気になります！頑張ってください！待ってま〜す!!! (2022年5月3日 1時) (レス) @page21 id: 92be24dccc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤宮 | 作成日時：2022年1月5日 2時
