59・贈り物 ページ14
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「信じてくれたようで嬉しいよ」
傑は笑った。信じてたとも。残穢を残したのは"会いに来る"っていう意味なんじゃないかと思って。高専で会った時また会おうって言ってたし。
「君なら気づくと思ったんだが、アタリだったね」
『…わざわざ結界まで壊しちゃってさ。直すの私なんだけど?』
責めるように言うと傑は眉を下げて「私が直そう」と掌印を組んだ。糸のように編み出された呪力は、硬く、柔く、広がっていく。
流石、特級。思わず感嘆してしまう程に綺麗で滑らか。結界を張るだけの作業でこうも差が出るなんて。
「破るなよ」
『君が同じことをしない限りは破れないと思うよ』
「……確かに」
ブーメラン発言だねと目を向ければ逸らされた。傑には合わない子供っぽい仕草に笑いを零す。
『それで、今日はどうしたの?』
「あぁ、贈り物があるんだ。受け取ってくれるかい?」
『…贈り物?』
オウム返しをした私に彼はくすりと笑って「君に合うものを探すのに少し時間がかかってしまって、来るのが遅くなってしまったけど」と言った。
少し眉を顰める。
宗教でも始めたのかと思うようなお袈裟を着た傑は手ぶらだ。小さいモノならその大きい袖の中に入りそうだけど……なんだか嫌な予感がした。
立ち上がって彼に近づく。
『私が喜ぶようなもの?』
「さぁ?どうだろう」
Aは嫌いかもと付け足した傑は受け取ってくれるかと繰り返した。どうしても受け取らせたいみたい。
(…べつに傑のプレゼントならつけ返したりしないのに)
『ちゃんと受け取るよ』
そう言って彼の前まで行けば傑は笑う。その笑顔は嬉しそうなものではなく少し申し訳なさそうなもので、上げかけた手がピタリと止まった。
(あれ、なんか違和感っていうか…)
チッ、と大きめの舌打ちが頭の奥で聞こえる。続けて「悪趣味なヤツ」と景の低い声が聞こえた。舌打ちも景だろう。
(悪趣味…?)
疑問に思って一歩距離を置こうとした時には既に遅い。傑は私の顔に手を添えて、もう片方の手で贈り物とやらを取り出す。
見えたのは__淡い光を閉じ込めた黒い球体。
私たち呪霊操術を持つ者なら一目で分かる、呪霊を閉じ込めたモノ。
(…は?なんで、)
問う間も無く、傑はソレを私の口内へと入れた。
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藤宮(プロフ) - 43 −ヨミ−さん» 初めまして。えっ…めちゃくちゃ嬉しいんだが?!?!私がこだわってる所に気付いてくださって…どうしよう嬉しい!ありがとうございます!頑張ります! (2021年11月19日 11時) (レス) id: 9fd58b0bd3 (このIDを非表示/違反報告)
43 −ヨミ−(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。物語の展開や設定、キャラ間でのそれぞれの感情とか滅茶苦茶素敵でした…!!本当に魅力的で、思わず見入ってしまいました´`* 応援しております、土主様の無理の無い範囲で更新頑張って下さいませ…!! (2021年11月19日 1時) (レス) id: 1d67640196 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - プスメラウィッチさん» 初めまして。う〜〜んオチはすっっごく迷ってるところでして…ご意見聞けて良かったです!ありがとうございます!!頑張ります! (2021年10月10日 21時) (レス) id: 9fd58b0bd3 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年10月6日 10時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - 通りすがりの誰かさん» わざわざ応援してくださりありがとうございます!!嬉しいです。任命式、無事に成功しました〜!! (2021年1月6日 0時) (レス) id: c231945d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤宮 | 作成日時:2020年10月28日 20時