罪ひとつ ページ3
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「なぁ、聞いたか?功幸家にお生まれになった方の話」
「あぁ聞いたぞ。なんでも術式を受け継げなかったと」
「天与呪縛か?」
「どうやら違うらしい」
「では、何をお持ちなのだ」
「顔だろうよ」
「はは、言えてるな」
「現当主夫妻も気の毒なことだ」
「次に期待するしかない」
____________
ざわざわと騒がしい客間では、私の話で持ち切りだった。
だがしかし、聞こえるのはバカにしたような言葉ばかりだ。
私の手を母がぎゅっと握る。
「あんな言葉、気にしなくていいのよ」
あなたはあなたらしく、堂々としていなさい。
そう、私の背を押す。
今日は私の6歳の誕生日を過ぎた頃。
学校へ入学する前に一度、功幸家の娘として皆々様へのご挨拶をとこの場をとった。
「全く、誰だ?あの様な口を利く者は」
私と母の後ろから、父が怒りを滲ませた表情でこちらに来る。
私の為に哀しんでくれる母と怒ってくれる父。
絵に描いたような円満な家族は居心地がいい。
「A、大丈夫だ。私達がついている」
『うん。パパ、ママ、ありがとう』
「可愛いA。いつも通り、しっかりね」
二人に連れられて行った先。
入った部屋では、先程までの騒がしさは既に無かった。
私に貼り付けた笑みを向ける方々は、さっきまでの言葉が私に聞こえていないと思ってるんだろうか。
『__お初にお目にかかります』
深く深く、頭を下げる。
挨拶を終えてゆっくりと頭を上げると、私の顔を見た皆様は「ほぅ…」と息を零す。
チラホラと、美しい、と聞こえた。
あぁ、許可も下ろしてないのに喋らないでいただきたい。
その時、バチ、と空色の瞳と視線が合う。
私と同じ程の背丈の男の子。
知っている、あの方は…__
「お集まりの皆々様、」
私の心の声を遮って父が話し始める。続いて母が部屋に入った。
あの男の子の顔を確認しておきたかったのだけど…見失ってしまった。
大人が多いこともあり、いくら存在感のありそうな子でも見つけるのは難しそうだ。
『(あぁ、それにしても、)』
ここに集まる大人達、私の話をしていた者達の、なんと可哀想なことか。
__本当に、私が顔以外の何も持っていない
と、そう思っているのだろうか。
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藤宮(プロフ) - 暁郗さん» 母 は 強 し 。……そう、母は強し……母は強し……コメント……ありがとうごぜェます……。 (2021年2月23日 20時) (レス) id: cdb1df32dd (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 母 は 強 し 。 (2021年2月23日 13時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - かわさん» えー?!同じ苗字ですか?!めっちゃミラクルですね!何だか私も嬉しいです!! (2020年12月31日 21時) (レス) id: c97ecbdc86 (このIDを非表示/違反報告)
かわ - まさかの同性の人が出てきて嬉しかったです!現実でも同じ苗字の人と親戚以外であったことがないので! (2020年12月31日 17時) (レス) id: e92a741f95 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - mimiさん» 悪いなんて!むしろ丁寧じゃないですか!凄く褒めて下さるのでめっちゃ嬉しいです。どうぞお楽しみ下さい!!! (2020年12月5日 19時) (レス) id: c231945d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤宮 | 作成日時:2020年4月22日 0時