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epilogue ページ36




結果としてスコーピオンと弧月のポイントを2000点上げることは出来なかった。というかしなかった。あの2人と戦って疲弊しきってしまったわたしは他の人とやる元気がなかったんだ、許せ。


あれからわたしを可哀想に思ったのか対戦を申し込んでくれた遊真くんと何戦かしたんだけど、瞬殺だったよ瞬殺。ポイント貰うどころか搾り取られた。もう絶対遊真くんとやりたくない。




「じゃあね駿くん、遊真くん」




これからもランク戦を続けるらしい元気な2人と別れてわたしはロビーを後にする。


ふと窓の外へ目を向けると、嫌になるくらい眩しい太陽がこちらを覗いていた。底抜けに明るい太陽を見ていると、自分はなんて暗い人間なんだろうと悲しくなってしまうから出来れば今すぐ雲の隙間にでも隠れてほしい。言っておくがわたしは雨が好きなんだ。


それなのにいつまでも照り続けている太陽に喧嘩を売っていたら、ふとすっからかんのままの個人(ソロ)ポイントを思い出して自己嫌悪に陥る。ああ、わたしは今日も嫌なことから逃げ出してしまった……


でもわたしは逃げたことを後悔する気はない。三輪隊に別れを告げたあの日から、長い期間をかけてこの時間が無駄にはならないことを知ったから。


今日は自分の部屋で新作のゲームでもしてゆっくり過ごそう。個人ポイントを上げるのはそれからでも遅くない。


そう心に決めたわたしの足取りは軽く、柄にもなくスキップしながら本部の廊下を進む。窓のない廊下まではあの太陽も覗きこんではこれないだろう。わたしは一生陰の人間として生きていくのだ。


人生陰キャ宣言をしたわたしはしっかりと荒船隊の隊室を避けるルートで自室へ向かう。ポイントを上げずに帰ってきたところをあの鬼ポケモンに見つかりでもしたらたまったもんじゃないからな。




「お前……今までどこほっつき歩いてたんだ?」




たたかう ▶︎にげる


やまだ は どうする?なんて。


後ろから聞こえてきた声に一瞬で冷や汗が吹き出す。振り向かずとも分かる鬼のオーラに、わたしは迷うことなく逃げるのボタンを押した。




「(さーて今日も地獄の鬼ごっこの始まりだあ!)」





やっぱり人間、一度肩の力を抜くのも必要ってことよ。


ぐっぐっと両手足を伸ばしたわたしはクラウチングスタートの要領で前傾姿勢になり、勢いよく地面を踏む。


わたしひとりだけだった廊下の静けさは、いつしか2人分の大きな足音で掻き消されていった。


決死のスタートダッシュまであと→←・



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作者名:藤丸 | 作成日時:2023年2月26日 23時

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