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CHAPTER5 空閑遊真 ページ26





「それじゃあまたね。」

「おう」



今から狙撃手の合同訓練へ行くというチカに別れを告げたおれは、ランク戦ロビーに向かいながらあの日出会った彼女のことを考えていた。


彼女というのはチカのトリオン量を測ったあの日、襲撃してきた三輪隊と一緒にいた狙撃手のことだ。迅さんにAと呼ばれたその狙撃手があの時放った弾はおれに当たることはなく、全て体すれすれを掠るだけだったことがおれにはずっと気がかりだった。


ただ単に狙撃の腕がなく全て外してしまったというならそれまでなのだが、レプリカが言うにはどうやら彼女の弾は当たらなかったのではなく、彼女が意図的に当てなかった(・・・・・・)のだという。


なぜそのようなことをしたのだろうとずっと考えていた。確かによーすけ先輩みたいに近界民に恨みがない人はいる。彼女が仮にそうだとしたら、そういう人は好き好んで害のない近界民を攻撃しようとは思わないのかもしれない。


迅さんと話していた彼女の控えめな態度を思い出す。もしかしたらあの人はチカと同じで人が撃てないのかも、とふと思った。


話したこともない彼女のことがこんなにも気になるのは、きっと彼女が相当な腕の持ち主だからだろう。


誰だって動いている的を正確に撃ち抜くのは難しい。ましてや的すれすれを狙うなんて相当な技術がないと出来ないはずだ。それを難なくやってのけた彼女は今まで一体どれほどの鍛錬を積んできたのだろう。


彼女みたいな狙撃手がチームに居れば他の戦闘員は大いに助かるだろうな、とおれは思った。


それなのに彼女はどこの隊にも所属していないらしい。てっきり三輪隊だと思っていたおれは、彼女の所属する隊を聞いた時の迅さんの返答に驚いたことを覚えている。



『Aはどこの隊にも入ってないんだよ。チーム戦はどうやら自分には向いてないと思ったらしい』



チーム戦が向いていないとはどういうことだろうか。1人で戦う方が得意ってことか?


どんなに考えても彼女の謎は深まるばかりでどうも釈然としない。どうせなら一度会って色々と問い詰めたいところだ。


そうこうしているうちにランク戦のロビーへ着いたおれは、一旦考えることをやめて対戦相手を探そうと辺りを見渡す。


すると見覚えのある顔と今考えていた張本人が2人ソファに並んでいるのを見つけた。


……なんていいタイミングなのだろう。


なぜ彼らが一緒に居るのか不思議に思いながらも、おれは迷わず声をかけた。

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作者名:藤丸 | 作成日時:2023年2月26日 23時

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