CHAPTER1 米屋陽介 ページ2
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初めまして、なんか知らないところで貶された気がする山田A高校1年生です。
わたしはついこの間16歳の誕生日を迎えたのですが、お祝いメールは家族からしか届きませんでした。ありがとうお父さんお母さん。
まあ自分の誕生日誰にも教えてないから当たり前と言えば当たり前なんだけどね。でも本当は
『Aちゃん生誕祭〜シャンパンタワーを添えて〜』
みたいなのを開催して大勢に祝ってもらいたいという願望は持ってます。
「よう山田!久しぶりだな!」
そんなわたしは今、元チームメイトである米屋陽介先輩に捕まっている。
ボーダー本部にある自室に行こうと人通りの少ない廊下を歩いていたらなにやら人の気配を感じたので忍法隠れ身の術で凌ごうとしたところ、いとも簡単に見つかってしまった。
わたしのこれはかなりの完成度なはずなので、今の人の気配はわたしの行動を理解しきっている付き合いの長い人間のものだということが分かる。それがまあ米屋先輩だったわけだ。
眩しい笑顔でこちらを見る米屋先輩の右手はしっかりとわたしの左手首を掴んでおり、逃げに徹しようとするわたしを絶対に逃がさないという執念が感じられる。そんな執念感じたくないんだけど。
「よよよ米屋先輩、何かごごごご用ですか?」
「はは、お前人と話す時バイブるの治ってねーんだな!」
バイブるというのはわたしが人と話そうとすると携帯のバイブレーションのように震えてしまうことから作られた言葉だ。発案者はまさかの奈良坂先輩。ぽそっと「バイブる……」って言ってたの本当に面白かった。
「ちょっと話したいことあんだけどさ、今いいか?」
「はあ」
その前にいい加減手を離してもらいたい。
わたしは掴まれた左手をちょっと強めに引っ張る。運良くわたしはトリオン体だったため、生身の米屋先輩の手はいとも簡単に離れた。よし、早く撤収しよう。
「では失礼します……」
「おいおい、まだなんにも話してねーだろ?」
「米屋先輩がロクな話したことなんて一度もないじゃないですか……帰ります……」
「お前な、仮にも元チームメイトの先輩をそんなぞんざいに扱うなよ」
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作者名:藤丸 | 作成日時:2023年2月26日 23時