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エレベーターから降りて部屋へ向かい、とりあえずインターホンを鳴らしてみた。
時刻は23時、疲れて寝ているかも知れない。返事も聞かずにドアを開けようと鍵を探していると、
がちゃ、と硬く鳴ってドアが開いた。
「おかえり」
ここ1週間ほど聞けなかった俺だけに向けた言葉。
甘くて低くてくすぐったくなるような大好きな声。
「ただいま...っ」
部屋に上がるなり、愛しい体温に包まれた。
この暑いのにきつく抱きしめられてとけてくっついてしまうような気さえする。
あたたかくて甘くて優しくてなんだか泣きそうになってしまって、胸に少し顔を埋めた。
どうしたの、甘えただねと笑いながら髪をふわふわと撫でられる。
「今日は起きてたんだな」
「せっかくいつもより早いのに寝たりしないよ」
「藤ヶ谷も忙しいのに」
顔をあげると目の前に唇が見えた。このごろ身体を重ねるどころかキスもしなかったのでやけに美味しそうな気がして目が離せない。
そのまま吸い込まれて、吸い込まれて。
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作者名:織 | 作成日時:2019年8月5日 4時