意思と鏡【文豪ストレイドッグス】【文スト】 (ページ7)

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　　　　伍話ページ7

機会をうかがったり情報を集めたり、なかなか計画は上手く行かず結局中学を卒業してしまった。

　鬱々と過ごす日々。

　そんな時、クラスメイトから連絡が有り、久しぶりに会うことになった。

中学を卒業してから約半月。近所に住むのにも係わらず何故か会うこともそんなに無かった。出かけた時に遠くから時々見かけるだけ。学校ではあんなに仲良く話したのに。

待ち合わせは、登校時にも集まった曲がり角。

　決めた時間に行ってみると、友人は既に来て待っていた。

「ごめーん、待ったー？」

　学校や友人と一緒にいるときのテンション。此の娘とだけは肩肘張らずに接せたのに、久し振りに会うとなると如何しても緊張してしまう。

　臆病者。

「んーん！全然。あたしも今来たばっかだから」

　其れに引き換え、此の娘の無邪気さは何だ。眩しいくらいの笑顔で手を振って。

「柑那久し振り、元気だった？近所に住んでいるのになかなか会わないんだもんね」

「うん、元気元気。相変わらずグーたら姉貴をしごいてるよ。柚子ちゃんも元気そう。お姉さんも元気？」

　嘘。お姉ちゃんなんて、もう声をかけるのも面倒臭い。

「桃ねぇは元気に大学行ってるよ。って云うか行ってた。今度卒業したから、春からは横浜行くんだって。横浜で仕事だって。」

「いいよねー、都会だよ、都会！おしゃれして、バリバリ働いて、お金貯めて、いいなぁー、かっこいいよねぇ～！あたしも大学卒業したら都会に出たいな～

　桜ねぇは相変わらず消息不明。横浜行ったまんま音信不通。何してんのかなぁ。

　桃ねぇは、若しかしたら桜ねぇを探しに行くのかもしれない……」

　柚子の話に横浜が出てきた瞬間、私の中に衝撃が走った。

　横浜！ヨコハマ！魔都(ヨコハマ)！

　ずっと探していた横浜への移動手段が見つかったかもしれない！

　その日は一緒に買い物したりして遊んだけど、私は横浜のことで頭がいっぱいだった。只、裏では動揺と喜びで狂喜していても表では普通にしていたから、柚子は気付かなかった筈。

　最後も、

「じゃぁね、柑那、今日とっても楽しかったね！」

何てあの眩しい笑顔で笑っていたんだから。

　私の中に、ちょっとだけど罪悪感が残った。