誰も死なない優しいヤンデレのような話 (ページ7)

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ここに来た理由は？お金が必要なんです。side審神者ページ7

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『ふぅ……』

私は加州に言われて、本丸の浴場で湯に浸かっていた。

久方ぶりの風呂は随分と気が抜け、私は少し微睡んでいた。

それがいけなかった。

｢───っていうか大体、あの審神者の言ってることが本当かどうかも──｣

｢あ｣

｢何？｣

意識が早急にクリアになっていくのを感じた。

｢審神者！？｣

｢なんで此処に？！｣

私は身体にタオルを巻いてこそいるが(向こうも腰に一応巻いている)この状況は非常にまずかった。何故なら……

『顔を見られた……』

｢どこの指名手配犯かな？！
っていうか気にするとこそこなの？それって女性としてどうなの？！｣

と、まともなツッコミを頂いてしまった。

『あー、取り敢えず……加州清光さんと…………どちら様ですか？』

｢僕のことわからないの？審神者なのに？｣

御二方(御二振り？)はそろって眉をひそめる。

『はぁ、まぁ初心者審神者なもので。気分を害してしまったのでしたら謝ります』

｢｢はぁっ！？初心者！？｣｣

御二方(面倒なのでこちらでいくぞい)は身を乗り出して私に詰め寄る。

『ええ、そうですが。あぁでも、私のようなものは例外だそうで。大半の方はきちんと審神者としての学びを受けてから本丸を持つそうですよ』

｢あんたみたいなって？事情がある、とか？｣

加州の方に訊ねられる。

『はい。私の場合はすぐにまとまった収入が欲しい、というもので。政府の方も事情を汲んでくださって、本丸を一から立ち上げるより、元々ある本丸の後任になった方がやりやすいだろうと』

｢それでここに来た、と｣

もう一振の方が続きを継いだ。

『そういうことになりますね』

頷き、見上げると御二方は怪訝な顔をしていた。

｢そもそも、なんであんたはそんなにお金が必要なんだっての？見たところ、オシャレとかには無頓着そうだし、自分磨きとかじゃなさそうだけど｣

加州の方が皮肉っぽく鼻で笑う様に私を見遣る。

『まあそうですね、自分の為に必要ってわけじゃないんです。見方を変えたらそう捉えることも可能ですけど』

｢勿体ぶってないで教えなよ。返答次第じゃ、あんたの首を落とすけど｣

もう一振の方が物騒なことを言い出す。

どうやら話さなければ帰してもらえないどころの騒ぎじゃないらしい。

『本当は同情とか誘ってる風に思われるのであまり話したくはないんですけど。
私の、兄が病気なんです。────』

それから御二方に、私が此処に来た理由を誤解されないように話した。