誰も死なない優しいヤンデレのような話 (ページ4)

今日:6 hit、昨日:8 hit、合計:9,061 hit

side加州清光其の弐ページ4

.

主はしばらくして落ち着くと、俺を顕現させた。

『加州……私はやっていける気がしない。みんな目に光がなかった……。あんな目、初めて見た……ははっ情けないなぁ……震えが止まらないや』

主は膝をつき、自分の肩を抱いて小刻みに震えていた。

｢主……っ大丈夫、大丈夫だよ主。俺がいるから。俺が主を守るから……！！｣

震える主の背中を両腕で包み、ゆっくりとさする。主は息を吸ったり吐いたりを大きく繰り返した。

『ありがとう加州。おかげでやる気が出てきた。この本丸で、2ヶ月、乗り切ってみせるよ。そうすれば兄貴の医療費にだって困ることないもんな』

｢主……｣

そういった主は、弱々しく上を見上げた。

──────

それから2ヶ月が過ぎ、主はついに乗り切った。

細かな部分は割愛するが、主は初めの宣言通り、特に刀剣たちを癒すことほとんどしなかった。

それでも此処の本丸のほとんどの奴らは主を審神者として、主君として認めている。

だからこそ、俺は不安で仕方なかった。

主が此処の刀剣たちを使えば、それだけ奴らは主という深みにはまっていってしまうと思った。

事実、俺がそうだった。

主に使われるのは気持ちがいい。
主はその物が1番使って欲しいという使い方でその物を使う。
だから、その物はもっと使って欲しいと思う。ただ、俺だけを使って欲しいと、思ってしまう。

他の奴らに主が奪われるのはたまらなく惜しかった。

きっと主以上に俺の事を上手く使うなんて、俺ですら出来ない。

主の1番にならなくちゃ。1番じゃないと、そうじゃないと、また捨てられちゃう。

そんな考えに支配されてた。

俺だけを、使ってもらうためには、此処の奴らなんて、邪魔なだけ。

邪魔するなら、消しちゃえば───

『加州』

そんな時だった。主から、話があるって呼ばれたのは。

主はちゃんと見ててくれた。
それに、わかってくれた。

俺の事、大切な仲間だって。

こんな邪なことを考えて、主の努力を全部自分の自己満足の為に壊そうとした俺を、刀解なんてしないって。

普通なら、政府に報告して、刀解して、終わりなのに。

ちゃんと話して、向き合って、正しい方に導いてくれた。

主、俺、主のところに来れて、すっごい幸せだよ。

俺の主でいてくれて、ありがとう。