誰も死なない優しいヤンデレのような話 (ページ18)

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side審神者其の参ページ18

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｢えぇ。しかし誤算でしたな。真逆審神者ともあろう方が農具小屋なんぞに行かれるとは。
聞いたところ、貴女が遭遇したのは推測通り、私の弟達ですな。恐らく鯰尾、骨喰、そして五虎退でしょうな｣

『畑仕事でもしようかと。ですが畑を保っていたのはやはり貴方の弟さんでしたか』

｢ふん、奇特な人の子もいるのですな。
えぇ、弟達が皆で交代して畑を管理して自炊しているのが現状ですぞ。貴女方のような審神者のおかげで｣

一期一振さんは鼻を鳴らし、皮肉げに言い放つ。

『でも、初代は違った、と』

彼の瞳を布越しに真っ直ぐに見つめる。
彼は少々たじろいだように肩に力がこもる。

｢……貴女に、何がわかると｣

『何も』

濁すことなくそう言うと、彼は逸らしていた瞳をこちらにやり、目をみはった。

｢だったら……！！｣

『ですが、ですが私はわからずとも知っています。貴方方の過去も。初代のことも。彼女を思うあなたがたのことも』

この本丸については、政府が情報提供を惜しまなかった。

『初代は皆から慕われ、おおらかで、皆を平等に愛していた。そう、聞きました』

一期一振さんは慈しむような、悲しむような、いろんな感情をごちゃ混ぜにしたような顔をした。

｢主殿は……秀才ではなかったかもしれない。ですがその、温かさで誰をも包み込み、この本丸には笑顔が絶えなかった……しかし……っ！！｣

『この本丸は、乗っ取られてしまった』

彼は項垂れ、弱々しい声音で語った。

｢もっと早くに異変に気づいていれば……！！
主殿は充分に働いていた。しかしあの憎い見習いがこの本丸に来てから、審神者室に篭もり、働く時間が妙に増えた。

初めは仕方が無いのかと思っていた。見習いが来た分それに関する仕事も増えるのだろうと。
だがそれは違った。あの憎い見習いは、主殿に全てを押し付け、自分だけ楽をしていた…！！
主殿は日に日に衰弱していき……見習いに医者にかかることを勧められ、断りきれずに現世に帰ってしまった……｣

『そして二度と戻ることは無かった、と』

｢そしてその後はひたすらに働かされ、かと思ったら顔目当てのものに金で売られ……｣

『様々な闇ルートを駆使したブラック審神者の元を転々とし、今に至る、と』

｢そこまで知っていて、厄介なこの本丸を請け負うというのは、正真正銘の馬鹿か、今までのような悪しき審神者ぐらいでしょう？｣

そう言って私を見る目には、微かに縋るようなものが見えた

気がした。