畑仕事は順調ですか？……手入れが先決でした side審神者 ページ16
.
｢それで、私の番に、回ってきたと｣
目の前の彼の圧に耐えかね、ごくりと喉を上下させる。
私は現在、大部屋の前にいる。
はず、なのだが、部屋の中に全く人影が見当たらない。恐怖でしかない。
……大部屋に……一人？
いやいや、そんなはずはない。
ほら、さっき手入れの終わった三日月宗近さんも言ってたじゃないか、｢次はきっと粟田口派の大部屋に行くことになるだろうな｣って！
大部屋ということはそれなりに人(？)がいるはずだと思ってきたのだけど。
……いや、今はまずこの人に集中しよう。
『そういう、事になりますね』
彼は、はぁ、とわざとらしく溜息をつき、もう一度こちらを見遣った。
｢私は、一期一振。粟田口吉光の手による唯一の太刀。藤四郎は私の弟達ですな」
『一期一振さんですね。短い間ですが、何卒』
頭を下げる。
｢弟達には、是非とも近づかないで頂きたい｣
頭をあげれば疑うような目とぶつかった。
『残念ですが、私にはどなたが一期一振さんの弟さんなのかがわかりませんので近づくなと言われましても』
すると彼は酷く呆れたような目で私を見下ろした。
身長が高いからってコノヤロウ。羨まし……い訳ではないんだぞ！！！
｢藤四郎が弟だと申しましたが｣
『皆様私に名乗ってくださらないので』
にこやかに返してやった。
アルカイックスマイルを発動中！
｢貴女が名乗らないからでは？｣
おっとこれは言い負かされそうだなぁ。
なかなかに口が達者で。三日月宗近さんの次に苦手かもしれないな、この人。
『名乗る程の者でも、というのもありますし、そもそも名などはなから決めてませんでしたし。名乗る気はなかったので』
｢真逆。名がないなどと？｣
一期一振さんは心底驚いたというような顔をした。
『審神者名は、ですが。真名は教えてはならないと、政府の方から散々言われたのでさすがにそれは駄目かな、と』
｢では真名で良いではないですか。わざわざ考えるなど、大変でしょう？
それに、呼ばれ慣れていない名は反応も遅れてしまうでしょうし」
彼は良いことを思いついたと言わんばかりの表情で、私に問う。
『いえ、やはり今考えましょう。響きが本名に近ければ反応できるでしょうし。真名を教えてはいけない気がしてきましたし』
｢おや、これは残念ですな｣
話しながら手入れ部屋まで来てしまったので彼を手招く。
一期一振さんは肩を竦めながら、手入れ部屋に……
『入らないのですか？』
side審神者 其の弐→←やんでますか？……此度の審神者は不思議な奴だな side三日月宗近
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あの。 | 作成日時：2019年2月9日 17時
