やんでますか？……恐らくそうでしょう。 ページ1
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彼の狂気には、気がついていた。
｢あーるじっ｣
ほら、そうやって私を呼ぶ声に、映す瞳に、弧を描く口元に、ほんの少し、彼の隠しきれなかった狂気が滲み出ている。
私はそれに気づいていた。
だから──
｢主、どうしたの？審神者室に来いだなんて。普段入れてくれないのに｣
だから私は、彼と話すことにした。
『ごめんね、突然呼び出したりなんかして』
｢ううん。主とお話できるなら、全然苦じゃないよ｣
ふわり、と笑う彼は、本当にそう思っているのか、どことなく嬉しそうだ。
こんな些細な表情の変化に気がつくと、ふと、こんなにも長い間、共に過したのだな、としみじみ思う。
『貴方と、話さなければいけないことがあるの。──加州』
私は覚悟を決めた。
どう転ぶのかはわからない。だが、このままにしてはいけない。直感がそう告げていた。
隣の部屋には長谷部に待機してもらっている。何かあっても平気なはずだ。……多分。
どう切り出そうか、頭を悩ませていると、加州が徐に口を開いた。
｢俺が主のこと、好きって気づいちゃったの？｣
いきなり核心を突かれて、噎せそうになる。
どうしてわかったのかと目線を送れば
｢だってほら、主緊張してるし、そうかなって｣
なんて。私が加州のことを理解しているということは、その逆も然り、なんて当たり前のことを今更実感した。
私がまた黙り込んでしまうと、加州が再び口を開いた。
｢ねぇ主、俺、やっぱり刀解されちゃうの？｣
じっ、と心を見透かされそうなほど真っ直ぐ見つめられる。
『刀解なんてしないよ。加州は私の初期刀で、ずっと一緒に戦ってきた、大切な仲間だ。』
しっかりと目を合わせてできるだけ真っ直ぐに見つめ返す。
加州は安堵し、肩に無意識であろう張っていた力が抜けた様子で、白い肌に赤みが増す。
『ただ──』
しかしまだ続いていた私の話の先を察したであろう彼は、唇をぐっと結び、聞きたくない、というように顔を少し伏せた。
『ただ、政府によって、刀剣男士と審神者が恋仲になることは禁じられているし、私自身、加州を仲間以上の目では見ていない。』
だから、と言い終える前に、加州が立ち上がって言葉を紡いだ。
｢待って主！俺、主と恋仲になんてならなくていい、むしろ恐れ多いし。主は高嶺の花なんだから、そんなに近くにいたら俺心拍数上がり過ぎて死んじゃうから！ただ、主が一番使ってくれる刀が、俺だったら、いいなって、思ってるだけ、だ、から……」
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作者名：あの。 | 作成日時：2019年2月9日 17時
