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「わ、可愛い…。」
源うさぎは飛んだり、跳ねたり、泣いたり、笑ったり…グリーンの上で所狭しと動き回る。
さすがだな、すごいな…と眺めてると手招きをされた。
「最後、最後!こっちおいで!」
…これでやっと終わり?
深呼吸を1つして、源の傍に行くとカメラに背を向けて座るように指示される。
「こう?」
「うん。で、足を片方に寄せて…ドレスを広げて女の子らしく。」
言われた通りに座り直すとにっこりと頷いた。
源は私の隣でカメラに向かって三角座りをし、手で合図を出す。
曲のサビ部分が流れ、私の肩に頭を乗せて甘えた素振りをすると「俺の女!」と叫んで膝の上に倒れ込んできた。
「お、俺の…女って…。」
過去のMVの最後で同じ事を言ってる作品があったなと思い出し笑い。
「今度は正真正銘の俺の女!だろ?」
「そうだけど…。」
「はい、よく頑張りました。着替えて帰ろっか?」
ひょいっと立ち上がり、私の手を引く。
「もう…良いの?源はまだする事「明日、明日。明日でも充分間に合うから。」」
スタッフさん達に源は「先に帰るね。」と挨拶をし、着替えてスタジオを後にした。
「飯でも食って帰るか?」
「…うん、お腹減った。」
「何が食べたい?」
悩んでるうちにタクシーが到着、乗り込んで更に考え続ける…。
「決めらんないなら俺が決めるけど?」
「源に任せる。お腹減りすぎて逆に決められない。」
「だろうなと思った。あれもこれも浮かび過ぎて整理付かないんだろ?」
「…うん、そう。」
心の中を見透かされたような変な気持ちになるけど、それだけ私を理解してくれてるって事だもんね。
「ん、どした?疲れたんならもたれて寝てな。」
「…何となくね、自分に嫉妬してた。」
「え?自分で自分に?」
「うん。私は未だにファン目線で見ちゃう時があるけど、源は私を奥さんとして…見てるでしょ?この数年分の記憶がないせいで不思議で仕方なくて…うまく説明出来ないけど。」
「Aは俺を旦那さんとして見れてないから嫌だって事?」
「愛は愛でも違う愛な気がして…源をちゃんと愛してた自分が羨ましい。」
突然ふわぁと欠伸が出て、源に肩を抱き寄せられる。
「急がなくても大丈夫だし、俺は何回でもAに惚れさせる自信あるから。」
“じゃあ早く惚れさせて”
なんて…恥ずかしくて言えるはずも無くて…。
「…楽しみにしてるね。」
「おう、任せとけ。」
微笑む源に頷き、私はそっと目を閉じた。
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作者名:fugurifurifuri0 | 作成日時:2020年11月27日 16時