甘い…生活？ (ページ29)

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29話目　ページ29

「あー、ふわふわする～。」

トイレに行こうと立ったら…畳が綿になったのかと思うほど歩きにくくて右往左往する。

「お…い、危ないぞ。」

「これぞ、典型的な千鳥足のお手本～。」

手を差し出して心配そうな源と面白そうに私を観察する剛。

「ん、大丈夫だよ、大丈夫。」

「酔っ払いほど大丈夫って言うよね。」

「剛、笑ってる場合じゃ…転ぶなよ！」

壁に添って歩いてトイレに到着。っていっても部屋に備え付けられているトイレだから遠くはない。

用を足して立ち上がると一気に酔いが回ってきた様な…？

「うーん、飲み過ぎちゃったな。」

洗面台の鏡に映る私の顔は真っ赤で、でもあの嫌な気持ちを紛らわすのに仕方なかった…と思う。

好きって…二人とも好きって…何なの、この感情。整理つけられないよ。

「A、大丈夫？吐いたりしてない～？」

「本当に大丈夫だから。」

トイレから出ると剛が「はい。」と肩を貸してくれた。

「歩ける「介抱するって約束したでしょ？」」

「もう…過保護だなぁ。」

部屋に戻って自分のお膳の前に座ると源から水と何かの薬を渡される。

「…何？」

「二日酔いにならないサプリメントだ。念の為に飲んどけ。」

「いらな「飲め。社会人にもなって二日酔いとか恥ずかしいだろう。」」

「…わかった。」

私が受け取ると源はフロントに電話をしてお膳の片付けを頼み、露天風呂に入っていった。

「俺らは仲居さんの邪魔にならないようにこっちに座ってよう？」

縁側にある向い合わせのソファに誘導され、ため息をつく。

「お、どうした？気持ち悪い？」

「ううん、大丈夫。酔っ払ったなぁって。」

「たまには良いんじゃないの？頻繁にやったら源に怒鳴られそうだけどね。」

私の手からコップを取り、水を飲んで微笑んだ。

柔らかくて、全てを包み込んでくれそうな笑顔。

…好きだなぁ。

「うん、俺も。」

「っ、え？」

…口から出てたの、今…？

「アハハ、好きってそういう意味の好きじゃ「いい加減に…素直になりなよ。」」

私の額を撫で、顔を近付けてくる。

「A、ここ最近、俺らの事…男としてみてるでしょ？」

「な、何を言って「俺と源もAの事が好き。」」

ガラッと引き戸の音がして、源が露天風呂から出てきた。

「…何の話をしてるんだ？」

「源も俺ももう待てないよって話。」

「バカ言うな、俺は気が長い。」

「え、その…。」

真剣な顔の二人に挟まれ、私はしどろもどろで俯くしかなかった。