17話目 ページ17
「どうしたの、何かあった?あ、ご飯運ぶの手伝ってね。」
「あのさ、Aって…国松の事どう思う?」
少し困り顔をした剛にサラダを手渡し、「何で?」と聞く。
「国松が…お前に一目惚れしたんだとよ。」
「一目惚れ…?私に?何でっ!?」
源はテーブルにグラスを並べ、冷蔵庫から珍しくビールを出した。
「何でって、そんなのわかれば苦労しないよ。」
「ったく、国松のやつ…。」
「え…困る…な。」
国松さんという人をきちんと知ってるわけではないけど、いきなり一目惚れとか聞かされてもどうすれば良いのか分からない。
「だから、剛。あいつが家に来るのを阻止するぞ。」
「国松ちゃんには悪いけど、邪魔させてもらうしかないね。」
二人は缶ビールを開け、出したグラスに注がずにグビグビと傾けた。
「Aさん、今から警察の方が来るからランチは後にしてね。昼休憩、延ばしてあげるから。」
部長にそう言われて、がらんとしたオフィスに私1人がポツン。
お腹が減った私は早くランチに行きたいのになかなか来なくて時計とにらめっこしている…。
「もう…直接電話して聞けば良いんじゃないの?」
番号知ってるんだし…とデスクに突っ伏した時にノックの音が聞こえてきた。
「A、前に使った部屋に来てく「あ、Aさん!お久しぶりです!」」
源の頭の上から被さるように顔を出した、満面の笑みの国松さん。
「ほら、行くよ。遊びに来た訳じゃないんだからね、国松?」
飄々と現れた剛は国松さんの背中に手を置いて、手招きをしてくる。
「し、失礼しました!」
…あぁ、面倒事になりそうな予感しかしない。
嫌々腰を上げ、重い足取りで皆の後に続いた。
「お、前…今は職務中だぞ!」
「どうしてもお渡ししたかったんです!」
「…国松ちゃん…下の車で待ってようか?」
可愛らしい小さな箱を押し付けるようにして渡してきて、敬礼して部屋から出ていった。
私は手の中にある小箱を見つめて唖然呆然。
「こ…れ…どうしたら「貸せ、俺から返しといてやる。」」
「え、それも国松さんに悪「悪くない。職務中に渡してきた国松が悪い。」」
ひょいっと引ったくるようにして小箱を取り上げ、剛はカバンに放り込む。
「…と、今日はAに見てもらいたいものがあって来たんだけど。」
「会社に来なくても家で良いじゃない。」
「そういう訳にはいかねぇんだよ。」
源は折り畳み椅子を開いて座り、舌打ちをしながら足を組んだ。
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作者名:fugurifurifuri0 | 作成日時:2020年9月9日 15時