2008年9月�� ページ11
精神的に擦り減らされた重い体を引き摺りながら帰ってきた寮からは明るい声が溢れていた。
テレビを前にして揺れる白銀の髪とその両隣に並ぶ一回り以上小さな背中が微笑ましい反面、仲間外れにされた様で少しもやっとする。
「どーん」
「うわっ馬鹿A！あ！あ゛ー！！」
「「勝ったー！」」
画面の中で競り合って走っていた小さな車が1台、大堰の妨害により失速し、抜き去られていく。
1番最後にゴールを通過したのが五条のキャラだったのだろう。
「A様！」
「おかえりなさい」
「たでーま。楽しそうだな、何してんの？」
「「マ○オカート！」」
あれだ。知ってるぞ。
赤いオッサンがえげつないコースでカーレースしてるやつだ。
漫画やゲームはそれなりに知っているつもりだったが、ことテレビゲームに関しては馴染みがない。
理由は単純。施設にはテレビが無かったからだ。
今なら外部の情報を入れない為だったんだろうと予想はつくが、そもそも電波が届くのか怪しいところだ。
「Aさん、かわりますよ」
「残念だけど遠慮するわ。オレこーゆーの酔うんだよな」
巻き込まれたであろう七海は大堰を身代わりにしようと試みるも失敗に終わった。
動体視力は良い方だと思っているが、画面越しとなるとどうにも目がついていかない。年だろうか。
「随分お疲れじゃん」
「頭の固え腐れジジイ共に大人気でさあ…」
言っていてかなり虚しい気分になってきた。
どうせモテるなら自分好みの相手がいい。
美々子に代わって夏油が参戦したカーレースは随分と白熱している様に見えた。
「珍しいぐらいへこたれてるな」
「硝子さんじゃねえけど煙が欲しい気分」
「残念だったな。今は持ってないよ」
「禁煙？」
「まさか」
微笑ましい光景、暖かい空間。
死と背中合わせの生活をしているとこう言った日常が愛おしくてたまらなくなる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 333人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
トト(プロフ) - 梅チョコさん» ありがとうございます。細かいところまで読んでいただいて、感激です。お楽しみいただけるよう頑張ります。 (2021年3月20日 10時) (
レス) id: 2fbe74351e (このIDを非表示/違反報告)
梅チョコ(プロフ) - シリーズ完結おめでとうございます。ストーリーは勿論、トトさんが所々間に入れられる情景描写が好きでした。引き続き番外編も楽しみにしています。 (2021年3月20日 0時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
トト(プロフ) - サクラさん» おわー沢山ありがとうございます。主人公くんは勝手に喋ってくれやがるので如何削減するか困りましたが、楽しんでいただけたなら何よりです。リクエストにつきまして、パパ黒とのお話はいつか書きたいと思っているので気長に待っていただけたらと思います！ (2021年3月15日 0時) (レス) id: 2fbe74351e (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 長文駄文、大変失礼しました‥。貴方様にこのほとばしる想いを伝えたくて‥！字数が足りず４回に分けて投稿させていただきました‥！ (2021年3月15日 0時) (レス) id: 68e1c7d112 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - リクエストとしましては、やはりこのまま本編ルートに進んでほしいなぁ‥と思いますし(傑が離反してないので厳しいかな‥)、主人公君とパパ黒の過去話なども読んでみたいです！とはいえ、一つの区切りとしてここまで書いていただきまして、ありがとうございます！ (2021年3月15日 0時) (レス) id: 68e1c7d112 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：トト | 作成日時：2021年2月25日 21時
