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『はあ……』


頼みの綱だった名探偵への依頼は、残念ながら作ったレモンパイを丸々平らげられただけで終わった。こうなったら自力で何とかするしかない。


寝る支度も済ませベッドで仰向けになっていたAは暫くすると、キッと眉を吊り上げて起き上がり、ベッドの真ん中で正座状態になる。その両手には携帯が握られていた。携帯の連絡先の中から赤井の番号を探し出し、「発信」と書かれた画面をタップしようとゆっくり指を近づけていく。

───ヴーッ!ヴーッ!


『わっ!?』


指が画面に触れる直前に、手の中の携帯が震えた。不意打ちで吹っ飛ばしてしまいそうになったそれをなんとか両手の中に収める。未だ震えている画面には、まさに今、自分がかけようとしている相手の名前が表示されていた。


「A。今時間いいか」

『はっはい!大丈夫です!こっちも今まさに電話しようと思ってたところなので!!』


裏返った声で返事をしつつ、横目で時計を見る。なんだってこんな夜中に…?と思ったが、アメリカと日本では相当の時差があったことを思い出した。となると向こうは今午前だ。だとしたら全然不自然ではない。


「そうか。実は報告をするにあたって情報が足りない部分があってな。協力してほしい」

『もちろん!』





いくつかの質問に答え、その話の流れでやれあの観覧車の時がどうだっただの、あの時は貴方の変装がバレそうでひやひやしただの、たった数か月前に起きた事で談笑していた。死を覚悟した瞬間も、当人達にとってはいい笑い話だ。


「Heyシュウ。お取り込み中悪いがそろそろいいか〜?」


電話の向こうから同僚らしき男が英語でそう言っているのが聞こえた。


「チッ…そろそろ切るべきだな。そっちの要件を聞こう」

『へ?』

「Aも俺に電話をしようとしてたんだろ?」

『あー、え…っとですね』

「ん?」


本当の理由、教えてくれないんですか
そう言う気満々だったのに、談笑してる間に昨日の赤井の声を思い出してしまった。あの時の赤井の声は、真剣そのもので。わざわざ聞き出そうとするのは無粋ではないか、と今になって思い直し、聞くのが憚られたのだ。


『……声が、聞きたくなっちゃって』


やっぱりやめよう。本当に大丈夫みたいだし、たまには詮索も介入もせずに女子らしく待ってみるのもいいじゃないか。


「……」

『あの、どうしました』

「……あ、ああ。まさかそんなこと言われるとは思わなくてな」

『はい?』


思わず素っ頓狂な顔になる。いきなり何を言い出すんだこの人は。

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(プロフ) - 全部面白い!続き読んで見たいです!皆さん、頑張って下さい! (2018年9月24日 20時) (レス) id: 4b63d11e04 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 正直、どストライクです…!時間ごとにそれぞれの贅沢が詰め込まれていて、読んだことのない作品の主人公にもとても惹かれるものがありました。また時間を見つけて全ての作品を読ませていただきます。この上なく贅沢な時間をありがとうございました。 (2018年9月24日 17時) (レス) id: 4ee63399c0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:SNYZ | 作者ホームページ:https://twitter.com/nnn_zcn  
作成日時:2018年9月24日 16時

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