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「…芯にクる寒さ」
「そうだな」


 ギャラリーから『やり切った』表情で出てきた2人は、閉店間際だったカフェにてドリップコーヒーとラテを購入し、それを両手で包みながら、ホテルへ戻るのであった。


「ありがとうね、こんな旅に付き合ってくれて」
「こちらこそ。あんなに美味い料理を堪能できるとは思わなかったから、いい勉強になった」


 降谷は部屋の革張りのソファへ腰を下ろし、Aはバルコニーから見える愛する街、NYの夜景を眺めながら会話を重ねる。

 コーヒーの味から降谷はどんな豆をブレンドしているのかを考え、Aはどうしてこの街はこんなにも愛おしいのか、真剣に考えつつも、しっかりと会話を展開するのだ。


「とんだ贅沢をしてしまったな」


 降谷は、この5日間のニューヨークでの滞在を振り返り、バルコニーでまどろむ彼女へ声を投げる。


「たまには、こういう息抜きも必要でしょ」


 降谷からしてみれば、彼女は365日贅沢に暮らしているように見えるのだが。まあ、ニューヨークは『たまに』の贅沢だ...ということにしておこう。
(年に3回は「ニューヨークに行ってくるわ」と唐突に出国しているようにも思うが。きっと彼女にとっては『たまに』なのだろう。そういうことにしておく。)


「また、どこかに行こう」
「今度は英国でも行くか?」
「いや、買い物したいからパリがいい」


 バルコニーからこちらに戻ってきた彼女は窓を閉めることはせず、冷たい風を降谷へ吹かせながら、彼の隣へ移動してくる。

 その表情はふてぶてしさの中にも、どこか楽しげな雰囲気があり、ブーツを脱ぎ捨てながら「パリはいいぞ」と自慢げに言い放った挙句に、指にはめられたリングも外して、「ふう」と息を小さく吐くのだ。

 緩くなり始めたコーヒーを眺める降谷。窓の向こうで輝く摩天楼は、「ここで他の街の話をするな」と嫉妬しているのか、闇夜の中、そのどこかでパトカーのサイレンの音を鳴らした。


「セーヌ川のほとりを7cmのヒールを鳴らしながら歩くのって、この世の何よりも贅沢だと思う」
「パリに行ったこと、あるのか?」
「7回くらい...あるかな?留学目的で、半年間パリジェンヌになったこともあるし」


 ___ パリのことなら、任せなよ

 そう、ウィンクを降谷へ飛ばして、Aは開け放っていた窓を閉めた。
 
 カーテンが暗闇と光を仕切るのと同時に、シックな室内は、マンハッタンの摩天楼を締め出したのである。



「シャワーでも浴びて、さっさと寝よう」

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(プロフ) - 全部面白い!続き読んで見たいです!皆さん、頑張って下さい! (2018年9月24日 20時) (レス) id: 4b63d11e04 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 正直、どストライクです…!時間ごとにそれぞれの贅沢が詰め込まれていて、読んだことのない作品の主人公にもとても惹かれるものがありました。また時間を見つけて全ての作品を読ませていただきます。この上なく贅沢な時間をありがとうございました。 (2018年9月24日 17時) (レス) id: 4ee63399c0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:SNYZ | 作者ホームページ:https://twitter.com/nnn_zcn  
作成日時:2018年9月24日 16時

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