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「大丈夫?上着貸そうか」
「いらない」

被さるギリギリのところで食いつき気味に応えてやったのに、彼は全く驚かなかった。まるで予想してたみたいに、いつもの、やけに足が長く見える立ち方をするだけ。

なんだか酷くムシャクシャしたので、わざわざ顔を上げて、しっかり目を合わせまでして、言ってやった。

「腹立つ」

すると彼は、その青く透き通った目を丸くして瞬いた。今更そんな顔されたって機嫌はもう治らない。

「僕に子供扱いされたから?」
「違います。おにーさん被害妄想激しいの?」
「ほんとに怒ってるね…」

自己中な君に言われたくない。口ではああ言ってても目が代弁していた。

再び手元に目を落としキューブを再開するものの、残りの5つがなかなか難しい位置にいて上手く整列してくれない。やっぱりムシャクシャする。なんでこう、わたしの内心をかき乱すことばっかり。言うつもりなんてなかった愚痴が、内からほろっと溶けだした。

「わたしこの国嫌いです」

コツ、とつま先から力が抜けて床に触れた振動を、足の裏で感じた。そこから動かない。固まっている。髪に絡まった視線を解くように、視界を遮っていた束をかきあげた。どうして?と問う声の腑甲斐無さに意地の悪そうな笑みを浮かべながら。

「夜は照明で日本の形がくっきり浮かび上がる。日中は冷暖房を効かせすぎて体調を崩す。暇な時間はスマホばっかり見てる。最悪なくたって、死にはしないのに」

凝り固まった肩と首を回して顔を上げると、ちょうど電車が駅に止まったところだった。車両の前側の扉からギターケースを担いだ男性たちが大声で話しながら乗り込んできたので、なんでもなさそうな顔をして電車を降りた。相変わらず暑いものの人も疎らで喧騒も遠い。わたしと彼の足音がハッキリと輪郭を描いている。ぱたり、という情けないローファーの音と、コツ、という凛々しく背筋を伸ばした革靴の音が、交互になったり重なったり。

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(プロフ) - 全部面白い!続き読んで見たいです!皆さん、頑張って下さい! (2018年9月24日 20時) (レス) id: 4b63d11e04 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 正直、どストライクです…!時間ごとにそれぞれの贅沢が詰め込まれていて、読んだことのない作品の主人公にもとても惹かれるものがありました。また時間を見つけて全ての作品を読ませていただきます。この上なく贅沢な時間をありがとうございました。 (2018年9月24日 17時) (レス) id: 4ee63399c0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:SNYZ | 作者ホームページ:https://twitter.com/nnn_zcn  
作成日時:2018年9月24日 16時

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