67.ペット(四十物十四) ページ19
俺はその服のレースの波に、なぞるように触れて確かめる。男には似合わないいつわりの重なりは、俺の貧相な身体をつつみこむ。Aさんがそれを見て微笑んでくれた。
「じ、じぶん、かわいい、っすか?」
「うん、かわいい」
「よかったあ…」
月だけしかしらないこの俺たちの秘密は、なんどもなんども連なっていく。こんなこと間違ってるって思うのにやめられなくて、俺はもうおかしいんだ。Aさんが俺の骨ばった手を引いて、おおきい姿見の前に誘う。それに暗くうつる俺の姿はなんとも情けなくて、それが恥ずかしくて泣きそうになる、けれど、Aさんの愛してくれるこの格好が好きでたまらなくなって、ひみつがまた増える。
「A、さん」
俺はわざと声を高くあげる。Aさんの熱を持った指が俺の頬をかすめる。愛玩動物を撫でるような手つきで俺にさわる彼女は、世界でいちばん残酷なひとだった。触れたところから俺は死んでいく。殺していく。
Aさんの脚が俺のスカートの裾に当たって、くすぐったい。それは神経を透き通って細胞を過ぎ去ってからだ中に伝染する。どこもしびれておかしくなって、愛してほしくなる。「おんなのこ」の俺だけを好きなあなたに。
Aさんの指先で。てのひらで。視線で。爪先で。舌で。くちびるで。
「…ぜんぶ、もっと、さわってください」
俺はAさんの犬で、これはどうしようもない事実だ。
女になれと言われたら女装をして、足を舐めろと言われたら床に這いつくばって、どうして、そんなに彼女のことを好きなのかというと………それは忘れたけど。一般的な恋愛じゃないのはわかってるし、Aさんの愛が気まぐれだってことも知っている。それなのにおさまらない、間違っているのに、崇拝とよぶべきこの、感情は、ほんとうに、ほんとうにどうしようもない…
「す、好きです、あなたが、おれ、Aさんがすき…」
「……………どうして女の子なのに、俺なんていうの?」
そうして俺は愛されるのをやめさせられた。どんなに泣いてももうこの夜は帰ってこない。今日はもう存在を認知すらしてもらえないだろう。俺は涙ぐんで、しくしく痛む頬をなでた。Aさんが打った頬は赤くあまく腫れていた。これが俺たちの愛の生活なんだと思った。
鏡で見た自分の顔はひどく、幸せそうだった。狂ってるみたいに、幸せそうだった。
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43沿い(プロフ) - 名前さん» リクエストありがとうございます!ユメゲンちっと久しぶりですね…!了解したしました! (2021年3月15日 1時) (レス) id: 4f61e3adde (このIDを非表示/違反報告)
名前 - 毎日覗いています!急なリクエクトなんですけれど崇拝型というか盲目的というかそういった風の夢野幻太郎さんってお願いできるでしょうか… (2021年3月9日 8時) (レス) id: bc5ff4fc8b (このIDを非表示/違反報告)
43沿い(プロフ) - ユウコさん» 返信遅くなりましてすみません…山田了解いたしました!がんばって書きます! (2021年3月9日 2時) (レス) id: 4f61e3adde (このIDを非表示/違反報告)
ユウコ - どうも初めまして!いきなりですがリクいいでしょうか?バスブロに愛されてるお話しは出来ますか?ヤンデレでも大丈夫です。もし無理ならヤンデレな山田一郎で彼女を誰にも取られたくない、可愛い過ぎて見られたくないから閉じ込めた、みたいなお話しでも良いので。 (2021年2月28日 21時) (レス) id: 72567c030f (このIDを非表示/違反報告)
43沿い(プロフ) - さやかさん» はじめまして!ヤンデレ好きな方に出会えてうれしいです!二郎くんがんばって書かせていただきますね! (2021年2月27日 0時) (レス) id: 4f61e3adde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:43沿い | 作者ホームページ:https://plus.fm-p.jp/u/43zoiand3eda
作成日時:2020年1月12日 3時