【ヒプノシスマイク短編集】俗悪

42.心臓形掌握(入間銃兎) ページ43

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(ちゃちい小芝居はもうやめにする。)
9のじゃじゃ馬がいたとしたなら、俺たちは1の事件だ。それを酔狂だという市民皆様のにこにこ顔を全部ブン殴り、しかばねの山頂で俺は最高に笑いたい。愛を蹴飛ばして得られるものを知りたい。欲望にまみれた街で、結局俺がいちばんに欲深いのだった。
文書改竄なぞ簡単なことだ。簡単なことだからこそ堕ちるのだ。Aの目はおびえていた。ブタ箱寸前の崖で震える小娘。俺に愛されるなんて本当に可哀想だと哀れみ、けれどもおまえのせいだとも思った。匿ってきた俺の破壊衝動は日に日に尊大さを増し、臆病さを捨て、獣とそう変わらない愛を愛する心を拾い、狂おしい激情を覚えさせられた。麻酔のように、ふれても温かく感じない。びりびりと流れる非人道主義者としての矜持は、とうとう愛するという能力にも影響を及ぼしてしまっている。

ビルの生え揃うその隙間で、俺はAの人生をおかしくさせたい。
Aを狂わせたい。そう思うのは俺がもう狂っちまってるからだろう。
冬のはじまりの応能。

「あなた、このとき現場にいましたね？」
ひとりあそびの魔法が溶ける前におまえを繋ぎとめたかった。
「違います、わたしは家に」
「こっちはね。」
Aはわかりやすく顔を青ざめさせた。ああ、知ってるよ。事件発生当時、おまえは家にいた。俺ひとり以外の証人はいないが確かだ。

「遊びで捜査やってる訳じゃないんですよ。…ブタ箱に落ちたくないだろ？」
脳に響くようにわざとらしく囁いた。
俺はどうせおまえのヒーローにはなれない。ヒーロー、ヒロイン、それはもっと正しい形で結ばれるべき者どもだからだ。
きれいに目を閉じて微笑むかたどりが、この世でもっとも美しくあって然るべきなのだ。
悪の正しさなどは狂おしくあって然るべきなのだ。

俺はおまえの生を蝕みたい。息を喰み、拍動を呑み、やがて何もかも忘れて、愛を飛び越し、その先を目にする。それは展望的なようで、その実最低最悪の洗脳に過ぎない。
心すら握りつぶし、夢みてえな胎動だけを生きたいんだよ。

「まあ、やったのはわたしだったんですが。フフフ、アハ、アハハ。」
ずっと、おまえのその顔が見たくて堪らなかったよ。
さあふたりきりだ。
「もうおまえを逃したりはしない。ああ、俺だけの…A。ずっと俺たちだけで、おかしくなろう」

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すみませんでした

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